第24話ロイの依頼

「何!そんな凄い物が出来ているのか?」

「はい、おそらく40%は可能かと思います」

「40%など、そんな事不可能だ!」

「いいえ、触媒を変更すれば可能です」

「その触媒は何だ?」


「日本に帰ったら試作します」

「もしできたら凄いぞ!」

「そうですね」

自信を持っている亮は冷静に答えた。


「ところで、WSOは日本で約500億円

ほど企業に投資している」

「けっこう大きいですね」

「うん、それで我々は立場上その企業を

業績を上げなければならないんだ」


「はい」

亮はファンド会社は投資しっぱなしでなくて

投資側が利益を上げなければならない仕事

が大変な事がわかっていた。


「そこで、我々を手伝ってもらいたいんだが」

「何をするんですか?」

「我々の代わりに投資した企業の

取締役に入ってもらいたい」


「取締役!」

「取り締まり役になって業績の悪い企業の

情報を取って不正が有ったら摘発、メリットのある

企業との提携を進言してもらいたい」

「はあ、報酬は?」


「投資金額の10%の利益のミッションを

こなしたら年100万ドル+インセンティブだ」

「はい、もしも新しい投資先が有ったら?」

「それは、情報を集めて報告をしてくれ

こちらで審査して投資の許可を出す」


「わかりました」

「では、亮の帰国までに契約書を作っておく」

「お願いします」

「それから友子は有能だ亮が居なくなってから

株の方がすべて彼女が処理をして利益を上げた。

大事にしてあげてくれ、うちが欲しいくらいの

人材だ」


「はい、それは承知しています」

「じゃあ、今夜行くからな」

「はい、ん?誘ったかな?」

亮は食事に誘ったのはキャシーだけだと思っていた。


亮が1階のロビーに降りていくと

千砂子と明日香と友子と尚子と小妹が待っていた。

「亮ランチ食べよう」

千沙子が誘うと亮は尚子に聞いた。


「尚子さん何処がいいですか?」

ニューヨークのランチはホットドッグか

ハンバーガーかピザが美味しいわ

私がよく行った店がある」


尚子が連れて行ったのはリンカーンセンター

近くのビルにある「ビストロニック」

と言う店で2cmもある分厚い肉の

ハンバーガーやシュリンプサンドが有名な

店だった。


「この店懐かしいですね」

亮は窓から見える尚子が通っていた

ダンススクールを指さした。

「ええ、受付のサンドラまだいるわよ」

「へえ、なつかしいな」


「何があったの?」

小妹が聞くと尚子は亮がスタジオに乱入した

ストーカーを捕まえた事件の経緯を話した。

「はあ、ピストルを持った男に・・・

昔から無謀だったんだ」

小妹はため息をついた。


「無謀じゃない、勝算があったんだ」

亮は千沙子に心配を掛けまいと否定した。


「友子さん、この後ナチュラル・グリルの方へ行って

ワラントと広告の件で話し合います。

資金をどう動かしますか」

「私が動かせるのは亮さんのアメリカの資金と

日本の資金と香港の資金があります」


「アメリカの資金で1000万ドル動かせます」

「それで割り当て株を買ってください」

「OK」

「ロイがずいぶん褒めていました。日本に帰ってら

会社作って友子さんが働く環境を作ります」


「気にしないでください、コンピューターが使える

環境が有ればどこでもできます」

「わかりました、とりあえず事務所を作って

法人企業回線10Gbpsを繋ぎます」

「本当ですか」

友子は証券会社時代のネット速さを思い出した。


「亮さん、投資顧問会社を作っていてはいかがですか?」

「実はロイにWSOの投資先の管理を任されました、

とりあえずその管理で成功すれば、

会社を作ってもいいでしょう」

「承知しました」

友子が笑顔で亮の顔を見た。


ワラントの件はジョージと話を進めてください

「大きい!」

小妹が口に入らないほど大きなハンバーガーを見て

喜んでいた。


「尚子さん、芸能プロダクションは人材派遣業ですか?

それなら派遣元責任者講習を

受けなければならないのですが」


「そこが難しいのよね、芸能人は個人営業主

でそれのマネージメントが基本なんだけど

育成状態にあるタレントは給料制にして雇用契約

しなきゃならないわ

アルバイト制もあるわね。派遣なら厚生労働省の

認可も取らなくちゃ」


「結構複雑だね」

「私の場合は最初の1年は給料制、翌年からはマネージメント

契約、月45時間を超えてしまうから労働基準法違反に

なってしまうから」

尚子が嬉しそうに笑った。

「なるほど・・・」


「それでキャシーの件だけど

彼女何を考えているだろうね」

千沙子はキャシーの行動を疑っていた。

「いきなり亮に一目惚れだったりして」

明日香が亮の顔を見ていた。


「ジャックの女だったんでしょう」

キャシーを嫌っている小妹はジャックと

同じ品の無い女だと見下していた。


「でもプライドの高いアメリカの女性が

あんな男好きになるかしら、資産何千億の

お金持ちなのに」

尚子はアメリカ女性のプライドの

高さは身をもって感じていた。

「確かにそうだわ、変ね」


アメリカ人との付き合いが多い千沙子も

キャシーがジャックを愛する

まして肉体関係を持つなど考えられなかった。

「蓼食う虫も好き好きですよ。人の好みは分かりませんよ」

亮は男の立場で男女の付き合いを言いたかった。


※蓼は水辺に生える匂いが強く苦い植物で

虫よけやアユの匂い消しに使った香辛料


千沙子と明日香と尚子は買い物へ行き

3時に亮と友子と小妹はナチュラル・グリル

へ行くとロビーで亮は肩を叩かれた。

「亮」

「ああ、兄さん忙しいところすみません」


「いや、いい仕事を貰ったよ」

御神仁は裏の仕事の関係でアメリカに戻って

アメリカン・パブリシティで仕事をしていた。


亮は尚子と友子と小妹を紹介すると

先に会議室に行かせた。

「兄さん、広告の仕事を手伝って頂くのは

有難いのですが」

亮は3ヶ月前の経緯と今の一文字の話を伝えた。


「やはり、フィラデルフィアのNELか、我々も調査中だ」

「えっ、FBIの仕事じゃないですか?」

「日本が絡んでいればCIAも動くさ」

そこへサングラスにブロンドヘアの

黒のパンツスーツの女性が来た。


「お疲れ様」

仁が声を掛けると女は無言で亮に頭を下げた。

「俺のアシスタントミランダだ」

仁はミランダを紹介した。

「あっ、美喜さん変装下手です」

亮が笑った。


「な、なんでわかったの?」

美喜がブロンドの頭を触った。

「僕にそれを聞かないでください。顔認証システム

作っているんですから、

それに僕の前でパンツスーツ履いちゃダメですよ

そのも香水僕が作った奴じゃないですか」


「えっパンツスーツはダメ?」

「はい、ヒップラインで判断できます」

「それが分るのは殿だけですよ」

「殿?」

仁は美喜と亮の顔を見た。


「私の雇い主なので殿なのです」

「なるほど・・・」

仁は美喜の亮への思いを知って笑った。

「せっかくミランダと言う

名前を考えていたのに」

亮たちはエミリに案内されて会議室へ行った。


「しかし、君が僕の前に現れた姿で

今日が一番まともだな。最初に現れたのは

僕の中華レストランで写真と撮りに来た時で

バーテンダーでカクテル作っているし

トイレの掃除人もしている」


「だって、小妹は表私は裏の役割だから」

「まあ、ありがとう助かっている」

「いいえ」

亮は会議室に入り仁と千沙子と明日香は再会を

喜びミランダを紹介したが二人は美喜とは

気が付かず、シャオメイと美喜は目で合図を送っていた


「仁兄さんが担当なら色々と助かるわ」

千沙子が久々に会った仁を見て言った

「任せておけ」

ジョージが入って来て

亮はジョージに御神仁を紹介し

シンディたちとの関係を説明した。


「そうか、御神なら安心だ。それにオリバーと

同じ会社だったとは驚いたよ」

同じテーブルに座っていたオリバーが

仁と話をしていた。

そこへシンディとシンディの弁護士が入って来て

広告代理店の御神仁を紹介した。


「アメリカで御神さんと会えるとは思いませんでした」

御神仁とシンディは東京のファンションショー

を一緒に仕事をしたので顔見知りだった。

「それではアメリカンパブリックの

御神さんを中心に冷凍食品のアメリカ

と日本でのパブリシティをやってもらう事になりました」


ジョージは仁の経験と実績を元に決断した。

「よろしくお願いします」

ジョージと仁と亮とシンディが

握手をして話が終わり

秘書のエミリが持って来た契約書を元に

ナチュラルグリルの弁護士とシンディの弁護士との

協議が別室で始まった。


「亮、電公社の水瀬華と野島美幸には俺の方から

連絡を取り合って両国で進めて行くから

安心してくれ」

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