第22話レコード会社

「はい、まあ」

「それで相手はどんな男だ?」

「3日前にこっちに来た日本人です」

「日本人がお前のライバルか?」

「はい」


「日本人如きにやられるとはお前もだらしが無いな」

「申し訳ありません」

「わかった、始末してやろう。金額は張るぞ」

王はジャック・チョウのところへ行って肩を叩いた。


「分かっています。お願いします」

「それで男の名前は?」

「アキラ・ダンです」

「どう言う字を書く?」

ジャック・チョウが紙に漢字を書いた


「團亮だと?」

「はい」

「その男何者か知っているのか?」

「いいえ、日本人でしか知りません」

王はしばらく考えて突然大声で怒鳴った。

「馬鹿もの!」

ジャック・チョウは一瞬たじろいだ


「團亮はゴールド・ドラゴンのメンバーだ」

「えっ、ゴールド・ドラゴン!!」

「そうだ」

「あの、ユニオンチャイナグループの

 劉文光の一族ですか」


「ああ、團亮は、中国名は劉亮、劉4兄弟の

劉美華、劉文明、劉翔記の一人だ」

「はい?日本人がゴールド・ドラゴンのメンバー」

ジャック・チョウの足がガタガタと震えた。

「張。もう手を引け、もし手を出したら

お前の会社は一日でつぶされる

 そして、お前の家族は皆殺しだ」


「わ、わかっています」

ジャックは肩を落とした

「早めに亮に謝った方が良いかもしれないぞ」

「は、はい」

ジャックは後を振り返り怯えながらビルを出た。


~~~~~~~

「王大人、ありがとうございます」

後から劉文明が姿を現した

「殺してもよかったのに、あいつは評判が悪い」

「いや、殺せば早いが。亮が苦しむ」

「そうか、文明はそうとう亮が可愛いらしい」


「はい、彼は中国と日本の架け橋になる男です。

中国が最も信頼する日本人として」

「ほほう、私も亮が好きだ。そうだみんなで食事をしよう」

「はい、王大人の店につれてきます」

「あはは、待っているぞ」


~~~~~~~~~~~~

ブルックは父親のブルーノ・ジャックマンに

会って話をしていた。

ブルーノは2m近くの巨大な体で強面の顔で

ブルックに言った

「久しぶりだな、ブルック」

「パパ」


「ブルックすばらしい歌だったぞ」

ブルーノは下を向いて顔を上げなかった。

「ありがとう」

ブルックはブルーノの目から涙が落ちたのを

観るとブルーノに抱きついた。


「パパ」

「ブルック、グラミー賞を狙え」

「いいの?」

「ああ、あんなに凄い歌を聞かせられたら

何も言えないだろう」

「パパ」

ブルックは巨大な父親のブルーノに抱きついた


「でも、グラスボイスのお前が・・・」

「それが、私の喉を治してくれた人がいるの」

ブルックは亮の話をした


~~~~~

翌日

次々にエンパイヤステートビルの近くの

WSOビルに昨夜のメンバーが会議室に

集まって来た。

ブルックとジャネット

シンディとケイトとモニカ

日本から来た團千沙子、木田明日香、小村友子、

白尾尚子そしてロイとサイモン

小妹は入口のドア前に座った。


会議は昨日のライブの話から始まった。

まずサイモンがブルックの歌唱力、曲

パフォーマンスを絶賛した。

「どうして今まで君のような娘が

世に出なかったことが不思議だったよ」


「実は私グラスボイスで5曲くらいしか

歌えなかったんです。昨日の10曲が初めてでした」

「それで何故昨日はあんなに素晴らしい

パフォーマンスが出来たんだ?」


「彼、アキラ・ダンが私を唄えるように

してくれたんです」

「そうか・・・素晴らしい」

サイモンは亮の顔を見た。

「それで完治したんですか?」


「まだ、定期的な治療と経過観察が必要ですね」

「なるほど・・・レコーディングには耐えられる

と言う訳か」

「はい、その通りです」

「まあ、いずれライブをしないとセールスを

上げる事は出来ないな」

サイモンは悩んでいた。


「そうなると、亮はしばらくブルックと

離れられないな」

ロイは亮とブルックの顔を見て笑った。

「はい、出来るだけ頑張ります」

亮は頭を下げた。

「そうなると亮はずっと私の物・・・」

ブルックは心で思った。


話し合いはサイモンがプロデュースをして

ブルックのデビュー計画を立て

ロイが資金計画を立てることになった。

「ではよろしくお願いします」

早速弁護士と契約書の作成に入る事になった。


「おめでとう」

ブルックとジャネットは抱き合ったが

亮とブルックは心から喜べなかった。

「ところでジャネット」

サイモンは笑顔でジャネットに声をかけた。

「はい」


「実は今度僕がプロデュースするミュージカル

映画があるんだが出てみないか?」

「えっ?映画」

「ミュージカル映画だから君の実力が

発揮できるし君の美しさはアップで

見られる映画が良いと思う。

それとも舞台が良いかな?」


「いいえ、ぜひ映画に出てみたい」

ジャネットは飛んで喜んだ。

「脚本はこれだ。モーリーと言う役が

 まだ決まっていない

主役のライバルの役だがやってみないか」

ジャネットは台本を読むと

出番が多いのに驚いていた。

「やります!やらせてください」


「ミュージカル映画の興行収入は

他の映画に比べて売り上げはせいぜい

1億ドル。ただ、関連売上が

CDアルバム販売、配信ダウンロード

そして舞台へとトータルの利益は大きい」

音楽プロデューサーの考え方だった。


「はい!」

「サイモン、その映画に関する資金計画だが

利益計算をして算出してみる」

ロイはコリーナに算出の指示を出した。


「さて、尚子。君はレコーディングが

終わってPVも流すんだろう」

「はい」

尚子はサイモンを見つめた。

「それで今後の活動はどうするんだ?

 私が力を貸そう」


「私はアルバムをリリースして

プロモーションが終わったら日本に帰ります」

「本当か?」

サイモンが目を丸くして驚いていた。

「はい、亮と一緒に小さなプロダクションを

作って日本で活動します」

「もったいない」

サイモンとブルックが言った。


「私、アメリカに住んで日本と日本語の美しさ

分かったんです。最近では日本のアニメーションが

NETFLIXでリアルタイムで観られるので

日本の文化が伝えられています」


「確かに日本のアニメーション、その主題曲

がアメリカですごくヒットしている」

サイモンは納得していた。


「私が日本で頑張って、世界が私を認めてくれたら

 私は世界に出て行きます」

「あはは、こっちも亮有きか」

サイモンは腕を組んで笑った。


「ロイ、いっその事レコード会社を

買収したらどうだ」

「うん、すでに考えている」


「ロイ、受付に女性が来ているそうです」

コリーナがロイに言った。

「誰だ?」

「キャシー・ランドさんです」

「通してくれ」


「ごきげんよう、みなさん」

目にアイラインとアイシャドウを濃く付け

その奥にブルーの目が見えた、ゴージャスな

ブロンドの30代風の女性が入って来た。


「あっ、ジャック・チョウと一緒にいた女だ!」

小妹がしかめ面で女をみた

「みなさん始めましてランド不動産の

キャシー・ランドです」

「ロイ・ブラウンです」


ロイは立ち上がって握手をし

亮は自分の席をキャシーに譲った。

「キャシー・ランドさんは不動産の社長ですね」

「はい、そうよ」


「なんですか?ランド不動産て」

亮は隣にいたシンディに聞いた

「アメリカ最大級の不動産会社よ。

大都市にビルを何棟も持っている」

「戸建てじゃなくて良かった」


亮が下を向いて笑うと

キャシーは亮の脇に立った

「ねえ、あなたお名前は?」

「アキラ・ダンです」

亮は立ったままお辞儀をした。

「あなたの事を気に入ったわ」

「はあ、どこで僕を?」


「ジャックがあなたを見ていたから私も一緒に」

「はい」

「あの高慢な男の鼻をへし折ったわね。うふふ」

キャシーは亮に顔を近づけた。


「キャシーさん彼はまだ鼻をへし折っていない

ブルックは小声で言い、

ジャック・チョウの報復を恐れていた。


「ううん、大丈夫彼はこの件のすべてを

諦めたわ」

「そうなんですか?」

「はい、私それを伝えに来た」

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