第20話ライブの成功

「まずいな」

ブルックが8曲目を唄い始めるとすぐに

亮は尚子の隣で囁いた

「そうね」

尚子も異常を感じ取った。

「どうしたの?亮」

「歌詞を2回間違えた」

「それって?」


「かなり緊張している。声は出ているんだけど、

10曲目は頭が真っ白になって

唄えなくなるかもしれない」

「どうするの?」

「ちょっと行って来る」

亮は客席の一番前に座って居る

シンディたちの前にしゃがみ込み

ブルックの状況を説明した


「少し休めば飲み物を飲むとか」

ケイトが言うと亮が首を振った。

「僕が施術するのに3分かかります、

休憩を入れたらせっかく盛り

上がっているのにしらけてしまいます」

「じゃあスティーブに唄ってもらえば」

モニカが後のスティーブを見て言うと


「それじゃ、彼女の評価じゃ無くなってしまう」

「どうすればいい?」

シンディが聞いた。

「もう一度ステージに上がって何か出来ませんか?」

「亮、あなたのためなら」

シンディは立ち上がった。


「ありがとう、3分間時間を作ってほしい」

「わかったわ」

三人は目で合図を送りながらうなずいた


亮たちは舞台のそでに着くと

スタッフと打ち合わせしてマイクを用意した。

「姉さん、三人の服は?」

「はい、2着ずつ残っている」

「ここへすぐに持ってきてください」

「OK」

亮はブルックに合図を送った。


「ブルック9曲目が終わったら戻ってきて」

ブルックはイヤモニから聞こえる亮の声を

聞いて舞台の袖を見ながらうなずいた

服が袖に着くとシンディとモニカとケイトが着替え

ブルックが9曲目を終え拍手の中でライトが消え


「行くよ」

シンディが亮に合図を送ると音楽と共に舞台へ出て行った

シンディのウォーキングは美しく観客が魅了する

まさにスーパーモデルだった。

亮は舞台のそでに戻って倒れそうになった

ブルックを抱きかかえ椅子に座らせた

「亮、歌詞が出てこない」

そう言ってブルックは涙を浮かべた

「うん、わかっていた」

そこへジャネットが駆け寄って聞いた


「ブルック大丈夫?」

「大丈夫、僕が必ず治す」

亮の自信に満ちた一言で二人は身震いした

亮はブルックの汗で濡れた後ろ髪を上げ

襟元の天柱、風池のツボを押し

そして首元を左手と右手で暖めた


ステージでは

シンディたちが6着の服を見せ

ステージ中央に三人がそろうと

シンディがマイクを持った


「みんな、いかがでしたか?」

シンディが聞くと客席から「おお」と言う歓声上がった

「ブルックも良かったけど。私達の服はいかが?」

モニカが頭に手を回してターンをした。


するとまた大きな歓声が上がった

「この服は日本からからわざわざ運んできた服なんです。

ブルックと私達のために」

会場の女性から「素敵」と言う声が上がった


「そして、この日本ブランドスタジオDのデザインを

私が勤める事になりました!」

シンディが両手を振ると大きな歓声が上がった


「亮、シンディがデザイナーするの?」

千沙子が慌てて聞いた

「ああ、やってくれるんだ」

亮はうれしそうに笑った。


「何だって!!シンディが引退か?スクープだ」

客席にいたサイモンが電話で呼んだスタッフが

舞台の下に行ってシンディの写真を撮った

シンディは手を振った。

「ここで、みなさんとのお約束、最後の曲が終わったら

出来るだけ大きな拍手をしてください」

客席から声援が上がった


亮はすっかり元気が出たブルックとジャネットの

お尻を叩いた。

「さあ、がんばって」

「うん」

シンディに紹介されて出てきたブルックとジャネットは

元気いっぱいになってステージに飛び出し

10曲を歌い終わり長い拍手が続いた


「サイモン、僕も唄いたくなったよ」

スティーブがサイモンの肩を叩くと

サイモンがうなずき

スティーブはモニカのところへ行った

「モニカ、ブルックと・・・」

「OK」


二人はステージのそで汗を拭いている

ブルックのところへ行った

「ブルックすばらしかったよ」

スティーブがブルックに握手を求めると

ブルックが口を開けた。


「スティーブ・フィッシュ?」

「ああ」

スティーブはニコッと笑った


「アンコールをブルックと一緒に唄いたいんだって」

モニカがブルックの手を握ると

ブルックはうなずいた

「尚子も来て!」

ブルックは尚子に手を出した。


その時、小妹が亮に電話をかけてきた

「ジャックが喜んで手を叩いているよ」

「なるほど、そう来ましたか。小妹

もう少しジャックに張り付いてください」

「OK」


「何を唄おうか」

スティーブがブルックに聞くと

「カントリーがいい」

亮がぼそっと言った。


スティーブとブルックが亮の顔を見た

「あれ?まずかった?」

「いいねえ、最後に会場のみんなで唄うか」

「はい、私も好き」

スティーブはバンドのマイクのところへ行って

曲を決めた


「Shania TwainのStill The Oneだ、

ブルック、尚子、唄えるか?」

「もちろんです」

尚子もうなずいた。


スティーブとブルックと尚子は一緒に

ステージに出てアンコールに答え

スポットライトが当たった瞬間、

スティーブと尚子を見た観客から悲鳴が上がった


「さあ、僕達は客席で一緒に観ましょうか」

亮はジャネットの手を握ると客席に行った。

「うん」

ジャネットはうれしそうに頭を亮の肩にもたれかかった


ブルックとスティーブと尚子の

ステージは客席の観客を巻き込み

合唱になっていった

「いいぞ、いいぞ」

ジャック・チョウは観客と一緒に手を叩いていた


「キャシー、これならグラミー賞新人賞狙えるぞ」

ジャックの頭の中には香港を中心とするアジアの

プロモーションが頭に浮かんでいた

「そうね。私投資しようかしら」

「よし」

ジャックはキャシーと握手をすると

立ち上がって歌を唄いだした。


最高の盛り上がりの中で観客と大合唱した後に

シンディがマイクを持って案内をした。

「皆さん、帰りにナチュラル・グリルからの

プレゼント貰って帰ってくたね。

美味しいグミですよ」


そこに亮のところへ外で観客の整理をしていた

男が飛んできた。

「ミスター・ダンすぐ来てくれ出口で大騒ぎだ」

亮が見たのはお金を持って騒いでいた客だった。


「どうしたんですか?」

「こんなすばらしいライブ観て

ただで帰るわけにはいかない。

お金を払わせてくれ」

「俺もだ!払わせてくれ」

次々に来る客達がお金を手に握って挙げていた


「ありがとうございます」

亮はグミが入っていた大きな

段ボール箱をもってくると

客は10ドル、50ドルと

お金をその中に入れていった。


「亮、後で連絡をくれ明日

ブルックとみんなで話をしよう」

ロイとサイモンが亮と握手をして

100ドルを入れて行った。

「了解です」


「待っているわよ」

シンディとケイトが亮に話しかけると

モニカとスティーブは腕を組んで出て行った

亮はまるで募金箱を持っている

女子高生の気分だった

~~~~~~~~

ブルックの携帯に電話があった

「ブルック、おめでとう」

「ジャック」

「これから、俺が君の面倒を見る」

「いいえ、すべてミスター・ダンに任せます」


「なんだと!」

ジャックは大声で怒鳴った

「いいか、俺に無断でデビューしたら

お前の秘密をばらしてやるからな」

「えっ?それじゃ約束が」

ジャックは返事をせず電話を切った

~~~~~~~~~~

すべての客がシアターを出て行って

亮は箱を楽屋に持って来た。


「ブルック、凄いよお金が集まった」

亮が嬉しそうにブルックの顔を見ると

その顔は沈んでいた

「そうしたの?ブルック」


「今、ジャック・チョウから電話があったの。

 マネージメントはジャックがやるって」

「そ、そんな約束が違う」

「私もそう言ったの」

亮はちょっと考え込むと別な話をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る