第8話-プロローグ編-??side
騎士団の訓練場にて、全員が整列し先頭に立つ男-セルロフへと視線を向けた。200人以上いる中で、誰しもが口を閉ざし、無表情である団長の言葉をただ全員が固唾を飲んで待つ。
さながら受験の合否発表の様な光景だ。だがしかし、番号が書かれた看板も無ければ、講師の様な姿は勿論見当たらない。ただ講師よりも恐ろしい存在、セルロフが仁王立ちをし此方を一瞥しているだけだ。
彼に対して抱く感情は畏怖と尊敬。怖いと恐怖する瞬間もあるが、純粋にセルロフについて行けばどんな戦地だろうと大丈夫、そう思えるカリスマ性がある
だからこそ皆、団長について行く。
「では名前を呼ばれた者は前へ来い」
ただ淡々と話す声は訓練場に響き、
彼が発する存在感からか。はたまた今から自身の名前が呼ばれるかどうかの緊張からか、誰かの喉がごくりと鳴った–––––––––––––
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団長の右側に3人、
左側に3人、合わせて6人が名前を呼ばれ前へと立った。どうやら今回の討伐はかなりの実力派で揃えたらしい。
そう言いたくなるほどのメンツ揃いだ
「これってあれだよな。例の討伐の…」
「あぁ。直ぐに此処を発つとは聞いてたけど…。もう行くんだな」
「今回は1、2ヶ月じゃ帰って来れないだろうな」
ぽつぽつと話し出すのは、選ばれなかった奴等だ
前に出て此方を見据える同僚たちに羨望の眼差しを送りはするも、妬む者は居らず。
ただ、俺も国の為に命を掛けた闘いをしたかった。と思うだけである。なんていったって今回の獲物はあの雷神龍ナルハタタヒメだ。
闘いの中で命を落とせるのは騎士にとって本望ではないのか。死線を交え人は強くなる。
もしかしたら死ぬかもしれない。
もしかしたら勝てるかも知れない。
そんなスリルの中、成長するのだ。
「俺も行きたかったなぁ…団長と龍退治」
思わず溢れた俺の独白に、前に居たダチが振り向き小声で“正気か!?”と聞いてきた。
いやいや俺は至って正気で本気だ。
「俺はごめんだね。死にたくないし」
「ランは保身派だよなぁ」
「当たり前だろ!?龍だぞ!?尻尾で叩かれたら即死だろーがっ。リッタは怖いって感情どこに置いてきたんだよ」
「親の腹の中」
「今すぐ取り戻してこいバカタレ」
こうして雷神龍ナルハタタヒメの討伐メンバーが決まり、選ばれなかったメンバーのみお開きとなった。
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