第22話 経験値をどうぞ

「オババ様も経験値をどうぞッス。いや~、ブロッケンが“生殺し”と“手加減”のスキルを覚えてくれてレベリングが捗るッスよ。ありがとう、ブロッケン。」


『シャー♪』


そう言って、ご機嫌なブロッケンハリセンをオババに渡す。


「…お裾分けみたいに言うんじゃないよ。まったく。」


オババはハリセンを受け取って、グレイスのケツを力一杯叩く。


スパンッ―


「痛ッ!やめてたもれぇッ!」


涙目で悲鳴をあげるグレイスをオババが冷めた表情で見つめる。


「HPが1減ったくらいで騒ぐんじゃないよ。だいたい、これ以上の拷問、あんただってやってきただろう?」


「う、五月蝿いッ!妾は可愛いから何でも許されるのじゃ。」


スパンッ―


「痛いッ!」


「ヒャヒャ。何でも許されるのかい。そいつは凄いねぇ。でも、少なくとも、このイタズラ小僧は、お前をこれっぽっちも許すつもりはないらしいけどね。ほれ、疲れたから代わっておくれ。」


オババからハリセンを受け取る。


「ヒドイッスよ、オババ様。俺はイタズラ小僧じゃないッスよ。」


スパァァンッ―


「痛ぁぁぁッ!妾の話を聞いているのかえ?痛いって言っているのじゃッ!しかも、小僧のは音も凄いし特別痛いのじゃッ!」


レイピア型の毒針を右手に装備したブラックサンダーがグレイスに飛び乗る。


『そうです。主様はイタズラ小僧なんかではありません。”深淵の悪逆無道王”なのです。』


ブスッ―


「痛いし、痺れるぅぅぅぅッ!」


ケツに毒針を刺されて痙攣しているグレイスに向かって再度ハリセンを振り上げる。


「サンダー、今のはディスったッスよね?」


スパァァンッ―


『…申し訳ございません。』


ブスッ―


「うぅッ!お主らは全員悪魔じゃッ!こんな可愛い美少女に尻によってたかって、良い音が出る棒で殴ったり、毒針で刺したりしてるんじゃからなぁぁぁぁぁッ!」


オババがハリセンを寄越せとジェスチャーをするので渡す。


「ヒャヒャ。笑わせんじゃないよ。ワタシが悪魔だったら、お前は何だってんだい?」


スパンッ―


「痛いッ!ラブラブ、プリチーなミラクル魔法少女じゃいッ!」


「ヒャヒャ。人の生き血を啜って生き長らえている化け物が“プリチーなミラクル魔法少女”なんてよく言うねぇ。」


スパンッ―


「痛いって言ってるのじゃッ!い、生き血など啜ってはおらぬ。ちょびっとだけ奴隷どもから生命力をわけてもらっているだけじゃッ!」


「ヒャヒャ。ちょびっとだけ生命力をわけただけで、干からびたように絶命しちまうのかい?」


スパンッ―


「痛ッ!あやつらは犯罪奴隷なのじゃ。どのみち処刑されるのじゃ。妾が有効活用して何が悪いのじゃッ!」


「ヒャヒャ。ワタシは知ってるよ。見た目が良い女を見つけては冤罪をかけて奴隷堕ちさせていたのを。それも一人や二人じゃないさね。」


スパンッ―


「いだいッ!そんなの妾は知らんッ!それこそ冤罪なのじゃッ!」


「若い女官が年に何度も”窃盗で”奴隷堕ちになっていたけど、それも知らないのかい?」


スパァンッ―


「グゥ…。し、知らないのじゃ。」


「その女官の一人がワタシの姪だったんだよ。秘密裏に調べたら、あんたにかけられた冤罪だった。その他の女官もまったく同じ手法で冤罪にかけられていたこともわかったよ。まぁ、わかった時にはあの子は処刑された後だったけどね。」


スパァンッ―


「グゥッ!し、知らんッ!そんなことは知らんッ!知らんッ!知らぁぁぁぁんッ!」


「あぁ、昔もそうやってしらばっくれらたねぇ。自分の力の無さを恨んだよ。その時、ワタシは復讐を誓って里を出た。自分の刃を磨きながら、あんたの喉元に刃が届きそうな人間を育てるためにね。」


スパァンッ―


「ぐぎぃッ!…で、その育てた人間ってのが、その小僧ってことかえ?」


「ヒャヒャ。このイタズラ小僧は、ワタシが少し手助けしただけで、自分で勝手に強くなっちまったのさ。それも異常なスピードでね。本来、あの儀式魔法もワタシの命を生け贄にして行使する予定だったけど、“そんなもん必要ないッス”なんてあっけらかんに返事するんだよ。まったく。」


スパァンッ―


「痛ッ…


スパァンッ―


「や、やめるのじゃぁぁ…


スパァンッ―


「おいぃぃぃぃぃぃぃッ!…」


…………


………


……


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