第21話 悪逆無道王

「おおッ!まだ生きてたッスか?」


「はぁ…はぁ…。HPが60も削られている…。魔力60の妾が魔法攻撃でここまでダメージを負うことはない。やはり、魔法防御力無視の奥義じゃな。フハハッ!こんな強力な奥義、1日1度が限界のはずじゃ。ということは、あの一撃を耐えきった妾の勝ちじゃ。」


「何を言っているのかわからないッスけど。魔女兵倒しまくってレベルカンストしたッスからクラスチェンジするッスね。」


≪中級職:アビスウィザードがlevelMaxに到達しました。クラスチェンジ先を選択してください。≫


【クラスチェンジ候補】

・ネクロマンサー(上級職)

・闇賢者(上級職)

・アークドルイド(上級職)

・邪神司祭(上級職)

・カオス・オブ・カオス(上級職)※ユニーク


…”カオス・オブ・カオス”一択だな。…


※カオス・オブ・カオスを選択すると、白と黒が混ざった激しい雷と竜巻が周囲に巻き起こる。


…クラスチェンジする時の演出が最初の時よりも派手になってる。…


雷と竜巻がおさまると、骨格などが最適化されたうえに、右肩に肩マントのエフェクトが追加された。


…前回は見た目はあんまり変わらなかったけど、今回は常時エフェクト付きのパッシブ奥義-“カオスペリース”-もあるし、見た目が大分変わったな。…


「よしッ!レベルがカンストして上級職にクラスチェンジできたッス!」


【カシム=オーウェン】

人族/11歳/レベル1/経験値00

カオス・オブ・カオス(クラスチェンジ!)

/成長率SSS

HP:128/128

筋力:50(15UP!)

魔力:70(20UP!)

防御:50(15UP!)

速さ:60(20UP!)

わざ:60(20UP!)

武器:封印の魔道書(∞)、インセクト(6)、ミスリルナイフ(35)、パラライズ(8)、デモンズ・ヘル・インフェルノ(0)

防具:魔導士の服、魔導士の鎧、鑑定の腕輪、収納鞄、従魔の指輪、鑑定阻害の指輪、天使の指輪、朱の宝玉

スキル:エリート(経験値10倍)、秘奥義:生命吸収(与えたダメージの1割回復:パッシブスキル)、奥義:深淵の光(防御・魔法防御・防御系奥義無視の攻撃:1日1回限定:アクティブスキル)、奥義:カオスペリース(new!状態異常・即死攻撃無効、HP回復、ダメージ最大HP1割分カット:パッシブスキル)、秘奥義:カオティックセレモニー(new!任意の魔法を生け贄不要の儀式魔法に変換する:1日1回限定:アクティブスキル)


…ステータスは職業上限があるから仕方ないけど、新しい奥義はヤバイな。…


目の前の光景にグレイスが唖然とする。


「し、神殿のアイテムを使わずに、上級職に…。それに、あの激しい嵐はいったい…。」


…この世界では既定レベルになると、神殿で売っているクラスチェンジアイテムを使って転職するのが常識だからな。まぁ、既定レベルになった途端、急激にレベルが上がりにくくなるから仕方ないんだけれども。…


「クラスチェンジのメッセージを無視して、レベルをカンストさせるとアイテムがなくともできるんすよ。まぁ、最上級職になるにはアイテムは必須なんスけどね。」


「か、カンストッ!?そ、それよりも、さ、最上級職を知っているのかえ?」


「知ってるも何も、”エターナルウィッチ”の転職アイテムを探しにここのダンジョンに来たんスからね。」


「ッ!!!”エターナルウィッチ”ッ!!!た、頼むッ!妾にもそのアイテムの捜索を手伝わ…せ…て…え…っ…?」


グレイスは糸が切れたように、力なく顔面から地面に倒れ込む。


ドサッ―


そして、グレイスの背中に毒針を刺しているブラックサンダーが現れた。


『流石、上級職。ようやく麻痺毒が効きましたか。フフフ。主様。このレベリング装置は、私がいただいてよろしいでしょうか。』


…サンダーもいわゆる“無抵抗の敵をひたすら殴る”レベリングの虜になったか。「魔法で敵を回復できない」、「敵認定の相手からでないと経験値を得られない」などの条件をクリアするのは難しいけど、これ以上安全かつ確実にレベリングできる方法はないんだよな。…


「良いッスよ。でも、こんな高レベルの上級職を捕まえられる機会は今後ないかもしれないから、大切に使わないといけないッスよ。」


ブラックサンダーは優雅に一礼すると、突き刺した毒針を引き抜き、“天使の指輪”をグレイスの指に嵌めた。


『フフフ。御意に。しかし、“天使の指輪”を敵に装備させて、「自ら回復した」という形にすれば戦闘中でも敵でも回復できることを発見した主様はまさに”深淵の悪逆無道王”と名乗るのにふさわしいぃッ!』


…ディスんじゃねぇよ。しかも、“天使の指輪”を意味深に左手の薬指に嵌めるんじゃねぇよ。オババといいなんなんだよ。…

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