第24話

 どこまでばれているのか、不安になった。とはいえ、自分たちがデータでしかなく、僕がその創造者だなどとはさすがに思い至らないだろう。

「おもしれぇ。てめぇなら打開策をひねり出すかもしれねぇな。案内係を付ける。もっと広い所で話そうぜ」

「打開策?」

「俺たちが生き残るため、のだ。ああそういえば名乗ってなかったな。俺の名前はガイスト」

「……ヴィーレ」

「なるほど、聞いたことのない類の名前だ。じゃあ、あとでな」

 ガイストの気配が消えていった。扉が開かれ、白い光が差し込んできた。



 僕を待っていたのは、壺を抱えたフューレンと、髭面の男だった。やたらと(意味がわからないが極度に、という意味の人間特有の副詞)背が高く、袖から出た腕は不釣り合いに太い。頭には黒く染められたフードをかぶっている。

「認められたのですか。良かったですね」

 声は少しかすれていた。唇がひどく荒れている。

「二人、着いてきなさい」

 僕らは縄もほどかれていたし、武器を突き付けられているわけでもなかった。それでも男に黙ってついていった。向こうも、僕らを敵とはみなしていないのがわかった。

 街は石造りの建物であふれている。乾いた空気に包まれ本体にはいいかとも思ったが、砂ぼこりが多いのは難点だ。多くの人々は赤や黄色に彩られた美しい布を体に巻いており、幅の広い帽子をかぶっていた。顔の色は濃く、深い皺が目立つ。また、フューレン達の所に比べて水路が整備されているのも目についた。降水量が少なそうなので、水の確保に関しての技術が発達しているのかもしれない。

 しばらく歩いていくと、建物のない広場に出た。中央には高さ2メートルほど(正確には2157mmだった)の石像が建っていた。英雄の像を建てるのは人間の特徴である。だが、その像には違和感があった。顔には大きな眼鏡が掛けられており、耳の後ろから何枚もの大きな羽が翼のように垂れ下がっている。それだけならば権力者の象徴のようだったが、異様なのはそれらが顔と一体化していることだった。装飾品と体との区別がつかないようにあえて彫られているように見えるし、よく見ると顔自体の形が人間の骨格としては細長くのっぺりとしすぎている。

「グリュンドゥ様です」

 男はそれだけ言い、フューレンが深く頷いたあと口を開いた。

「この地を切り開いた方。一説には人類の創始者とも言われている」

「僕には神のように見えます」

「もちろん、神のような存在だ」

 僕の言葉は正直ではなかった。人間が神格化するときは、もっと美しく、厳かに、触れにくいものとして表現する気がする。グリュンドゥの像は、少しリアルすぎるように感じる。

 広場を過ぎ、少し大きめな建物の間を抜けていく。行政区だろうか、すれ違う人々の背筋がピンと伸びている。そういえばここまで、ほとんど動物を見ていない。小さなラクダのようなものが荷物を運んでいただけだ。発達した都市のわりに、複雑な機械といったものも見ない。車輪さえまだ見ていない。

「ここはわれわれが最初に降り立った場所だ」

 突然、リードの声がした。しばらく待っていたが、彼はそれ以上は何も言わなかった。

 彼らの最初の土地に、妙な恰好の英雄。その間には何かつながりがあるのだろうか。

 さらに進むと建物はなくなり、城壁を縫うような道を抜けて行った。数人の見張り兵以外人はいない。そして、目前に小山のような石積みが現れてきた。分析してみるとその形は三角錐に近く、中には空洞があるようだ。

「ここです」

 入口から見上げると、想像よりも大きいということが分かる(高さは12366mm)。太陽が隠れて見えなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る