第17話

 既に戦闘が始まっていた。門を巡る攻防だ。

 敵の目的は「奪う」ことだと言っていた。屈服させることでも、侵略することでもない。たとえ村人が死滅しても、奪う対象は残るのだから問題ないだろう。そういう戦いだった。

 村にとってみたら、門を破られるわけには行かないだろう。僕の知らない奥の手はあるのかもしれないが、それにしても戦力の差がありすぎる。

「大将を叩く。それしかない」

 敵の背後を取りながらも、二人だけではたいしたことができそうにもない。最初の一撃で不意をついたとしても、向き直られたら最後僕らは蜂の巣だ。

「どうやってですか」

「わからない」

「じゃあ、やめましょう」

 フューレンの瞳が、その視点を僕に集中させた。この様子を形容する言葉は「鋭い」のようだ。

「手をこまねいて見ているわけにはいかない」

「無謀なことをするよりは、しっかり考える時間を持つほうが大事です」

 視界が揺れ、痛みを感じた。どうやら、僕は殴られたらしかった。

「私に意見をするな!」

 口の中に鉄分が広がっていく。頭がくらくらする、という状態のようだ。

「頭が熱くなっていますよ。冷やさないといけない」

 暴力的行為は、敵対心だけから生じるとは限らない。人間は厄介な思考様式を持つので、自己肯定のために何らかのマイナスの行為を働くことがあるのだ。

「お前もスパイなんだろう! 私たちを混乱させるために……」

 人間の冷却装置は自動的には作動しないらしい。僕は注意が散漫になっているフューレンから銃を奪い、銃口を額に突きつけた。

「あなたの満足や使命感が問題ならば、今すぐ飛び出して殺されて来ればいい。でも、そうじゃないでしょう。そして僕も、あなたたちに対して傍観者でいるつもりはないんです」

 フューレンの瞳の中に、冷徹な目をした青年の姿があった。僕だ。人間の視点だと、今の僕はとてもひどい奴に見える。

「全てはかなえられません。優先順位を決めましょう」

「ヴィーレ、貴様……」

「僕の電算けいさんが正しければ、敵はこちらの動きを知っています。おびき寄せた以上、戻ってくることも分かっている」

「だからなんだ」

「慌てることも、無茶をすることも想像のうちです。敵の裏をかくには、冷静でなければならないんです」

「だったらどうしろと」

「見捨てた振りをしましょう」

「な……」

「僕ら二人で劇的にどうなるわけではないんです。犬死しても仕方がない。だったら、いったんここから退いて、敵の狙いを外しましょう」

「その間に負けたら……」

「それまでの村だったんです。敵がいることも、大事なものがあることも、全て知っていることだったはずです。それで負けるんなら、ただ、備えが足りないだけ」

 僕は導き出された当たり前のことを言っているだけだったが、フューレンが納得することはなさそうだった。非効率的な葛藤が、現場の状況を認識させることを拒んでいる。

「現にあなたは僕に対して無防備だった。味方をもコントロールできない人間が、多数の敵にどう向かっていくんですか」

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