第23話
赤になればいいのに。
僕が自転車の荷台から降りるのを、真鍋先輩はいつも支えてくれる。
足を庇いながら降りたところで、あ、マフラーって、思い出した。
巻かれたマフラーを取って、ちょっと悩んで………真鍋先輩の首に巻く。
馴れ馴れしいって、怒られるかな?
伺うように真鍋先輩を見ると、やっぱり優しい顔で笑ってた。
嫌われてはいない。よね?
うん、きっと………そう。
そうだって、思いたい。
「あったかかったです。ありがとうございました」
「風邪、ひくなよ」
「はい。………先輩も」
「じゃな」
「気を付けて!!」
行ってしまう後ろ姿を見送って。
ちょっと向こうの信号が赤になればいいのにって、願った。
そしたらまた振り向いて、手を振ってくれる………?
淡い期待で見ていたけど、信号は青で、真鍋先輩はそのまま行ってしまう。
残念。
そんなにうまくは、いかないか。
小さくため息をついた時、真鍋先輩が前を向いたまま右手をあげて…………その手を、振った。
どきんって。
した。
僕、に?
僕に手を振ってくれたの?
たったそれだけなのに。
たったそれだけが、嬉しい。
嬉しくて、笑っちゃう。
でも。
嬉しいのに、ちょっと…………悲しい。
だって分かりきってるじゃん。
僕はただの後輩。
どんなに仲良くなったって、僕と真鍋先輩はそれ以上にはならない。
だいたいそれ以上って………それ以上って、何だよ、男同士で。
寒い。
うちに入ろう。
僕、何かもう絶対彼女なんてできない気がする。
「ただいまー」
玄関を開けて、はっと、気づく。
彼女?
真鍋先輩に、彼女、いるかも。
あんなに優しくてあんなにカッコいいんだもん。
いてもおかしくない、っていうか。
いなきゃおかしくない?
はああああ。
今日一番のため息をついて。
僕は、玄関に座り込んだ。
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