~ hito / mono story ~

玲莱(れら)

~hito story~

占い

「おはよーっす! あれ? おまえ今日、徒歩?」

 学校へ向かう通学路を歩いていると、後ろから男の子の声がした。彼とは幼稚園から一緒でわりと仲が良い。高校に入ってからは減ったけど、中学まではよく一緒に遊んだりしていた。親同士も仲が良いので、家族ぐるみの付き合いだ。

 私も彼も、いつもは自転車通学をしているけど、今日は私は歩いていた。

「今日の星占い、おとめ座は最下位で、“自転車に注意”だって」

 朝のテレビの星占いは必ず見ることにしている。当たったり当たらなかったり、友達が見ている占いとは結果が違うこともあるけど、どうもやめられない。

「テレビの星占いなんて、あてになんねーと思うけど?」

 彼はそう言うけど、いつまでも女の子の間で占い人気はまだまだ健在。学校の休み時間にも、ケータイでいろんな占いをやってみたり、トランプで占ってみることもある。

「いーの。今日は自転車に近付かないの」

 そう言って歩き続ける私の隣を、彼は自転車でついてきていた。

「だけどさー、間に合うのか? 送ってやろうか?」

「いいよ、今日は自転車に関わらないって決めたんだから!」

「……なら良いけど。時間見ながら歩けよ。じゃーな」

 私の隣で自転車にまたがって歩いていた彼は、ペダルに足をかけて学校へ向かって走って行った。その後ろから同じ学校の生徒が、何人か自転車で走って行った。

 そして改めて腕時計を見たとき、

(──無理!!!)

 このままのペースで歩いていると大遅刻ということが判明。

 自転車で駆けていく生徒たちの間を、私は全速力で走った……。


「だから言ってやったのに」

 教室には、ギリギリ間に合った。先生が急用で、1限目が自習になっていた。何をしようかと思っていると、さっきの彼がやってきた。何度も「後ろに乗ればよかったのに」と言っているけど、今日は自転車はダメなんだ。

「100%当たるわけじゃねーんだからさー、おまえんちからここまで歩くのは遠いから、自転車通学なんだろ?」

「でも、100%外れるんでもないんだよ。可能性があるから、信じるんだよ。宝くじも外れるってわかってるのに、もしかして当たるかも、って思うから、つい買っちゃうんだよ」

「可能性ねぇ……」

「私は占いの可能性を信じてるから、今日は自転車に乗らないの」

「いや、でもさ、今日みたいに走って間に合わなかったら超恥ずかしくない?」

「自転車に乗って事故でもしたらどーすんのよ?」

 私は頬をぷぅ、とふくらませて、彼を睨んだ。

「どーすんのって、それは……。俺はただ、そこまで真剣に占い信じなくてもいーんじゃねーのって言ってるだけだよ」

 まるで、私が占いを信じているのが悪いみたいに聞こえて。

「もういーよ、ほっといて!」

 私は教室を飛び出した。


 彼が悪くないのはわかっている。

 私が占いをバカみたいに信じているのも、なんとなくわかっている。

 だけど、今までずっと頼りにしてたものを、いまさらやめられない。私を育ててくれた両親や、友人たちがいなくなるのと同じくらい、私には占いが大切だった。

(でも……彼の言うことも、正しいよね……)

 彼と言い争っているうちに、無意識にヒートアップしてしまった。

 ただ自分の意見を通したくて、自分が間違ってないと信じたくて。

 教室を飛び出してたどり着いた屋上で、冷たい風が気持ちよかった。火照ったからだと同時に、こみ上げていたものも少しさめた。

「私……バカだ」

「バカだよ」

 振り返ると、そこに彼がいた。

「この寒いときに屋上に来るバカがいるか?」

 何も言えずに黙っていると、彼は話し続けた。

「さっきは俺も言いすぎた。ごめんな。でも、せっかく送ってやるって言ってるのに乗らないおまえ、本当にバカだよ。それと、その……占い。解釈間違えてるぞ」

「え? どういう意味?」

「おまえの友達に聞いたら、悪いことじゃなかったぞ」

「でも、“注意”って……」

 わけがわからないという顔をしていると、彼がケータイを見せてきた。私が今朝見た占いの、おとめ座のページだ。私はテレビを見るというか聞いているので、ちゃんと読んだことはない。

「一番下。読んでみろ」

 ──【恋愛運】運命の人が自転車に乗って現れるかも?! 既に知り合いの可能性があるから、逃がさないように注意して!

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