第36話 ルンルン

 次の日、私は陽太がいつも出ている時間に合わせて家を出た。

「おはよう、陽太」

「祐希か。今日は早いんだな?」

「えらいでしょ?」

誇らしげに胸を出して言うと、

「それじゃあ、俺は毎日この時間に出てるから、もっとえらいってことだな?」

陽太は私を見下ろして軽くあしらってきた。

「チェ~。褒めてもらおうと思ったのに」

唇を尖らせて、不服そうにそう言うと陽太は

「もっとすごいことしてから言えよ」

また笑いながら、さらっとあしらう。昔から変わらないこの関係が、すごく楽しくて居心地が良い。

「例えば?」

「テストで全教科満点とか?」

「無理」

「じゃあ俺が、祐希を褒めることはないかな。てか早く行くぞ。背低いんだから、俺の倍くらい足動かせ~」

「なんだと~!」

陽太との久しぶりの登校。小学生の時に戻ったみたい。バカにされても、あしらわれても関係なくて、陽太といることが楽しい。久しぶりの感覚に、胸の奥がキュンと苦しくなった。

 追いかけっこみたいな感じで浩介たちを追い越して、私はいつもよりだいぶ早い時間に校門を通った。のはいいけど、

「ハァ、ハァ……。陽太、待って……」

「アホ。俺に追いつけるわけねえだろ」

息を切らしながらトボトボと歩く私を嘲るように笑って、陽太が少し先でこちらを振り返る。

「陽太、手貸して」

「ヤダ。一人で歩け」

手を差し出す私を見て、そっけなくそう返す陽太。なんだか切なくて、さっきよりも心が苦しくなる。

「もぉ~!」

その気持ちを怒りで隠して、頬を膨らませていると

「仲良いねぇ、お二人さん」

亮太たちの声が後ろから聞こえてきた。

「お前らの方がお似合いだと思ってたんだけどなぁ」

浩介が腕を組みながら、落ち着いたトーンで嬉しいことを言ってくれた。

 ――でしょ? みんなもそう思うよね?

そう言ってしまいたいのをぐっとこらえて、

「そうかなぁ?」

と笑顔を作ってとぼけて見せた。

「まぁ、今のうちは幽霊ちゃんの彼氏だし。穏やかに見守ってくれよ」

「じゃな~」

雄哉たちはそう言うと、後ろ手で手を振って三人は校舎の方に歩いて行った。

「今のうちは、だもんね?」

さっきの浩介の発言を聞いて、心がさらに軽く温かくなった。

 鼻歌を零しながら教室までの道のりをスキップで進む。

 気分上々! テンションマックス!

 今日という一日が、ものすごくいい日に感じた。

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