第28話 たからもの

「これ、だよな」

加藤君は恥ずかしそうに機種を確認して、自分から幕をくぐった。それに続いて、私も初めてプリクラの幕をくぐった。

「私、こうゆうの初めてで……」

中に入って一言目にそう言うと、加藤君も

「俺もなんだよね……」

困ったように彼がそう言った。それでも、どうしても加藤君との写真が欲しくて、苦悩しながら機械をいじっていると、いきなり眩い光が私たちを包んだ。

「眩し!」

瞼をぱちぱちさせながら、彼は目の前のパネルを見る。目の前に映し出されたのは、苦悩の表情で機械をいじる私たちの変な顔。

「なに、この顔!」

彼はそんな私たちを見て、楽しそうに笑っていた。加藤君の笑顔を見ると、自然と私も笑顔になれる。そうして二人で笑い合っていると、また閃光が私たちを包んだ。

「あれ、二枚で終わりか」

次に表示された写真は、自分で言うのは恥ずかしいけど、すごく輝いていた。

『反対側のデコレーションパネルで、写真をデコレーションしてください』

機械的な女性の声に促されて、私たちは一緒に機会を出て裏側に回った。

「プリクラって凄いな……」

「だね……」

手元のパネルに表示されている様々なデコレーション機能。素人の私たちには、なにが何なのかさっぱりわからなかった。

「よし! ものは試しだ!」

彼はそう言うと、パネルにタッチペンを走らせた。見る見るうちに彩られていく私たちの写真。美しい背景に、彼の少し癖のある文字が足される。

「よし、完成!」

加藤君は自信満々にタッチペンを置いた。

 加藤君が完成させた私たちのプリクラは、どんな名匠が描いた絵画よりも値がつきそうなほどに美しくて、とてもあったかかった。

「ほら、栞も」

「う、うん……」

加藤君にそう言われて、私もペンを走らせる。完璧な加藤君が写った写真に装飾なんてする必要なかったけど、なんとか自分なりに写真を完成させた。

「完了!」

加藤君は楽しそうに強くボタンを押した。

 数十秒後、私たちが装飾したプリクラが印刷されて出てきた。

「お、良い感じじゃん!」

「かわいい」

一枚目の写真は二人とも変な顔をしてるけど、それが逆に愛らしく見えて、すごく貴重な一枚。二枚目は私たちの笑顔が際立ったとてもきれいな仕上がりになっていた。どっちも私の宝物だ。

「これ、大事にするな?」

「私も」

そう言って見つめ合って、私たちは小さく微笑み合った。

 加藤君との初めて作った思い出の写真を胸にそっと押し当てると、加藤君への想いがまた大きくなった。今日だけでどれくらい加藤君の事を好きになっただろう。そう思うくらい、一日を通して加藤君の魅力をたくさん知れた気がして、私はすごく嬉しかった。

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