第16話 手のかかる子

「明日、なに着っかなぁ……」

俺は部屋のクローゼットを開けて、明日の服装に頭を抱えていた。

「てか、なんでもよくね?」

ベッドの上に転がった時、そんな結論に至った。好きでもない奴とのデートとの服装なんて、浩介たちと遊びに行くくらいの感覚でいいのではないかと、このとき思った。

「よし、服は明日でいっか」

ベッドから起き上がってクローゼットを閉めて、またベッドに倒れこむ。ぼんやりと天井を見つめていると、部屋の扉が二回ノックされた。

「ん?」

母だと思って一言で返事すると、

「お邪魔しま~す!」

扉を開けて入ってきたのは、祐希だった。

「なんで、ここに?」

首をひねって祐希の方を見て訊くと、

「明日ダメなら、今日教えてもらおうと思って」

悪びれた様子もなく、祐希は小さなテーブルの前にちょこんと座った。

「ハァ……。明日の準備で忙しいんですけど?」

嫌みを含めて言うと、

「じゃあ陽太は、私が留年しても良いって言うの?」

目を真ん丸にして純粋な瞳を俺に向けてきた。

「まぁ、俺の生活に支障はないな」

冷たくあしらうと、祐希はいつも通りにリスみたいに頬を膨らませて怒ってるアピールをしてきた。

「わかったよ。で、どこが分からないの?」

祐希の隣に座って、テキストに目を通した。

「ここと、ここ」

指定された問題の脇に、こないだと同じように薄い文字でヒントを並べて祐希に解かせた。

「できた!」

千ピースのパズルを完成させたみたいに歓びを爆発させて、祐希は自慢げにこちらを見てきた。

「はい正解。課題はおわり?」

途中式などのミスも確認してそう言って、俺は机についてきた椅子に座った。

「うん、とりあえずは」

祐希はそう言うとテキストを閉じて大きく伸びをした。テスト終わりの達成感を祐希の背中から感じる。本当に、手のかかる幼馴染みだ……。でも何故かほっとけない。本当に面倒な関係だ、幼馴染みって言うのは……。

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