最終話 二人だけの世界
タナカヤスオとアヤが行方不明となった今、ヤスオの妻は、ヤスオが残していた手紙の通り、離婚して娘と二人で暮らしている。
アヤの両親は、今でもアヤを探しているが、見つからず暗黒の世界で生きているような気分だった。
アヤの母は花が好きで、娘が生まれると分かった時、花の名前にするか彩り(いろどり)と書いて彩(あや)という名前にするかで悩んだ挙句、彩と名付け、花について盲目の娘に、少しでも理解してもらおうと必死に説明をし続けた。
親子で一緒に自分の好きな世界を楽しみたいと思っていたのだ。
それが今、アヤがいない世界は彩りを無くし、暗く沈んだ世界である。
なぜ、娘が姿を消したのか、母には分からなかった。
一生懸命、盲目の娘を育てたつもりなのになぜ…?という疑問しか浮かばない。
アヤの父は、アヤがいなくなったというのに、会社に行き、仕事をして帰ってくるという生活を崩さなかった。
アヤの母はそれだけが信じられなかった。
なぜ、最愛の娘が居なくなったというのに、この男は平然と普通の暮らしが出来るのかと、夫に対して不信感が芽生えるようになった。
一方、タナカヤスオの妻も、夫が消えたものの、離婚したせいで生活が厳しくなり、娘は学校へ行かなくなった為、退学処分となった。
全てヤスオが悪いのだと、ヤスオが行方不明の今も、不平不満を言っている。
「探さないの?」という娘に対しても、「探すわけない!」と怒鳴り散らしている。
そんな、二人の家族の事なんてお構いなしに、康男と彩は、二人で秘密の場所で生きている。
二人はこの場所を「光の世界」と呼んでいる。
元居た場所に戻る気などない二人は、二人きりで光の場所に居られることに幸せを感じていた。
闇の世界から抜け出した二人は今、偽の親子として人里離れた場所で生活し、暖かな光の世界で暮らしている。
終わり
闇の世界 まるみ @marumi-tama
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