第16話 君は旅行へ、俺はダラダラ

 テストが終わり、夏期長期休みに入った。

 郵便でテストの結果が届いた。

 結果は単位は落とす事はなかった。

 目標の単位数まで半分。

 後期も単位を落とさなければ、3年からは楽に過ごせる。

 就活準備も余裕を持てるし、バイトも出来そうだ。

 少し楽しみが増えてきた所で、俺は買い物しに部屋を出た。



 麦茶パック、2Lのスポーツドリンクを1本。

 あとは、醤油とサラダ油と砂糖と塩。

 野菜は実家から送られて来たから暫くは買わなくていい。

 肉は挽き肉。バラや切り落としより手軽だなと思う。

 本格的に作る気はない。食べられれば良いのだ。

 買い物を終えて帰宅する。

 隣の隣の清瀬きよせさんは、不在。

 菅崎かんざきさんと2人で2泊3日の旅行に行ったからだ。

 関西方面と言っていた。

 羨ましい。

 なんだか、寂しくなってきたな。



「楽しいね!」

「ほんとにね~♪」


 美鈴みすずと2人で旅行。

 今は宿泊場所の旅館で寛いでいる。

 美鈴の内定祝いを兼ねているこの旅行。


「明日帰るけど、お土産は大丈夫?」


 と美鈴。


「大丈夫だよ!家族の分は送ったし、あとは棚部たなべ君のお土産も買ったし!」

「ふ~ん」


 美鈴は頬杖をついて、ニタァ~と笑う。

 この顔、高校の時から苦手なんだけどなぁ。


「いつ、告白すんの?」

「ええっ!?」


 ふいの質問に動揺してしまった。


「きっと、あっ君は、さらの事、好きだと思うけどなー」


 わざと言葉を区切って強調してくる美鈴にイラッときたけど。

 両想い?まさか。そんな感じしないよ。

 まだまだ。


「もしかして、まだとか思ってる?」

「うん」

「ダメだこりゃ」


 溜め息を吐いてから、人差し指を私の方に向けて、美鈴はこう言った。


「モタモタしていると、他の子にいっちゃうよ?」


 グサッと心に刺さる。


「前に好きだった子とか、再チャレンジまたはその子に告白されたら、イエスって言うかもしんないよ?」


 ウグッ…言葉で私を殺す気か美鈴は。

 なんか泣きたくなってきた。


「さら、しっかりね~」


 と言って、美鈴は突っ伏した。


「くわぁー…すー…くわぁー…すー…」

「酔ったんかい!」


 地酒を呑んでいたから、美鈴は寝てしまった。

 毛布をかける。


「美鈴の言う通りかも」


 ポツリと呟き、私は1人考える。


 本当に、両想いだと、良いな…。



「ただいまー!なんて♪」

「おぉ、清瀬さん。おかえりなさい」

「はい、お土産!」

「良いんですか?ありがとうございます」


 清瀬さんが無事に帰って来た。

 部屋に入る前に俺の所に寄ったのが分かる。

 旅行鞄やキャリーケースがあるから。


「じゃっ、また連絡するね!」

「分かりました」


 手を振って静かに扉が閉じた。

 頂いたお土産、何だろう?

 テーブルに置いて早速開封した。


「あっ…」


 和の手ぬぐいが3枚。

 袋から可愛らしい虎が描かれている手ぬぐいを1枚取り出すと、手触りが安物とは違った。

 滑らかで、吸水性が良さそう。

 これで夏を乗り切ろうかな。

 大事にしないとな。

 2枚目は猫が描かれている手ぬぐい。

 そして、3枚目は気に入ったから保管しよう。

 水の流れが綺麗に描かれていて、波紋が広がっている所が印象的な手ぬぐい。

 あとの2枚は普段使いにしよう。

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