第15話 久しぶりに会う親友
「久しぶり、
学食に俺は、眼鏡をかけた冴えない顔の男といた。
同い年で学部は違う。
1年の時に大学の説明会、ガイダンスで隣の席にいて、その後俺から声をかけて少し話したら、いつの間にか仲良くなっていた。
目はキリッとしているが、雰囲気はほわんと優しさが滲み出ている。
高身長でスラッとしているから羨ましい限りだ。
ちょっと頼り無さそうだが、いざって時に頼りになるのかも。
「
「ん?言ってなかったか。実習先に居たんだよ」
彼の名前は、
実習先、というのは、教育現場のことを指す。
彼は教育学部の2年生なのだ。
「へぇー」
「迷走はまだしているし、実習先では失敗ばかりで、口下手だから教え方が大丈夫だったか不安でね」
「勉強を教えるのは、分かりやすいとは思うけど?」
「子供には伝わらない事だってあるよ。いろんな子が居るんだから」
苦労してきたんだな。お疲れさん。
「奢るよ、それ」
俺が奢ると言って指差したのは、結唯が食べていたワカメラーメン。
これくらいしか、出来ないが許してくれ。
「ありがとう」
「次も頑張れ」
「うん」
美味しそうにワカメラーメンを食べる結唯の様子を見守るのであった。
この後、俺と結唯はカラオケに向かった。
※
「たくさん歌ったー!」
「気分が良いな」
男2人、フリータイムで、1人10曲は歌った気がした。
「さて、相談ってのは?」
そう、俺は結唯に相談をしたくて、ついでにカラオケに行こうと誘ったわけだ。
静かな場所でも良かったが、誰かに会うとなると嫌なんでここにした。
「お前の両親、というか、親父さんの話を、もう1度聞かせてくれよ」
「あぁ、あの話ね」
結唯の親父さん、高校の時に大恋愛をしたとか。
前に聞いた時は、さつきの事が好きだった時で、結唯に恋愛相談をしたら、実はさって感じで聞いたのだ。
初めて聞いた時は、切なく、儚く、泣けてきた。
結唯の親父さんが高校生の時の恋の話。
相手の女の子は、今はこの世にはいない。
恋愛って、こんなに純粋になる事があるのかと、衝撃的だった。
想い想われが、どれだけ幸せかー…考えさせられた。
「…て感じでした」
重く話しはせず、淡々と語られた。
「何でまたこの話を聞きたくなったの?」
俺の目を射抜くような、今にも心の内を見透かすのかと思うくらいの、鋭い視線にビビる。
「新しい恋が、始まったというか」
言葉を濁しそうになるが、正直に言った。
「そうなんだ!」
驚いた顔の結唯。
「誰?どんな人?」
聞くと思った。
名前をふせて、かつ、個人情報に当たらない程度に話した。
「ふーん、なるほどね」
ニヤニヤするな、恥ずかしいだろう。
結唯はアイスコーヒーを一口飲む。
「上手くいくと良いね」
だと良いけどな。
「敦音なら大丈夫」
「何が大丈夫なんだよ」
「僕とは違って男らしさがあるし」
「いやいや」
「僕は冴えない頼りない、だから」
ガクッと肩を落とす結唯。
「お前、優しいだろう」
「優しさだけじゃダメ」
だんだん暗くなる親友に俺は慌てて「歌え」と言うと、結唯は「そうだね」と言って、大きな声を出さないと歌えない勢いのある曲を歌った。
歌い終える頃には、スッキリとした顔になり「あー!僕も、良い人に会えないかなー!」と叫んだのだった。
「じゃあ、また!」
「おう、ありがとな!」
現地解散した。
※
最寄りのバス停で降りた。
「さて、買い物して帰るか」
清瀬さん、プリン好きかな?
買い物ついでにプリンを買って帰り、清瀬さんの部屋をピンポン。
「あら、
明るく出迎えてくれた。
「これ、差し入れです」
「ん?プリンじゃない♪」
テンションが上がった。
「ありがとう!」
「いえいえ」
「上がってく?」
「いや、今日は課題あるんで」
「そっか、分かった」
「んじゃ、また」
「うん、またね」
静かに清瀬さんは扉を閉めた。
喜んでもらえて良かった。
俺も自分の部屋に入った。
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