第29話 彼女と迎える朝



これは………どうしたらいいんだろうか。

昨晩もなかなか寝付けずに深夜気を失うように眠りについたが、夢の中で大型犬にのしかかられて苦しくなって、ハッと目が覚めると、依織の足が俺の身体に乗っていた。

足が乗っているだけではなく、まるで抱き枕のように俺に抱きついて眠っている。

なんでこんな事に……


「ち、ちかい……」


いや、昨日の事を考えると無意識にそうなる事も理解は出来る。

出来るが俺は………

昨日の夜あれほど決意したが、あっさりと理性が飛んでいきそうになる。

高2の夏休みに好きな女の子に抱きつかれた状態で目覚める。

こんな事、夢に見たことすら無いが、これに耐えうる高2男子はこの世の中に存在しうるのだろうか?

いや、おそらくいない。存在するはずがない。

ビーストモードが発動しそうな自分が怖いが、俺の薄い理性の壁はいつまで持つだろうか。


「う、う〜ん」


依織が寝言と共に腕を廻してギュッと俺に抱きついて来た。

やばい。

心臓が跳ね上がり鼓動がさらに早くなる。

うっ、心臓が……これ以上は俺の心臓がもたない。


「い、依織……」


反応が無い。


「依織、朝だぞ。起きろ〜」

「………ん」


反応した。


「依織、起きてくれ。朝だよ」

「………ん、はい」


依織が返事と共にゆっくりと目蓋を開いてくれた。


「おはよう」

「…………おはようございます」


まだ意識がはっきりとしていないのか反応が鈍い。


「…………………あっ」


「あっ」という小さな声と共に依織が跳ね起きて、みるみる内に顔が真っ赤になってしまった。

どうやら依織もこの状況は恥ずかしいらしいが、俺もこの状況の依織に対してどう対応して良いかすぐには思いつかない。


「あ、あれだ。なんて言うか、寝てると色々な………まあ、その、うん」


非日常的な状況に置かれ上手く言葉が出ない。


「ご、ごめんなさい。失礼しました」

「いや、こちらこそ。ありがとうございました?」

「〜〜〜どういたしまして……」


完全に間違えた。ありがとうって……確かに有り難かったが、ここで言うセリフじゃない事だけは俺にも分かるがテンパった俺にはどうする事も出来なかった。


「あ、朝ごはん作りますね」

「う、うん。お願いします」


依織はいたたまれなくなったのか、そそくさとベッドから抜け出していって身支度を始めた。

今日も寝不足気味だが、朝から精神力が著しく削られてしまった。

依織と入れ替わりで身支度をしている間に依織が朝食を用意してくれている。

昨日に引き続き充実メニューのようだ。

しばらく座って待っていると、テーブルの上に朝食が並べられた。

今日は鮭の塩焼きがメインのようだが、朝ごはんに鮭の塩焼きってどんな幸せ朝ご飯なんだ。

一口食べて何故か涙が出そうになってしまった。

懐かしくてほっとする味とでも言えば良いのだろうか?

別に俺にとってお袋の味というわけでもないのだが、日本人のDNAに深く刻み込まれているのかもしれない。

朝ご飯に鮭の塩焼きは最高に美味しい。

と言うよりも依織が作ってくれた事で元来の味から数倍クオリティーが跳ね上がり、とにかく美味しい。


お知らせ

HJ文庫モブから始まる探索英雄譚4が発売されました。

週末のお供に是非買ってください。

よろしくお願いします。

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