第2話
初めて疑いを持ったのは小学五年生の時だった。海外で取り違えられた乳児の話を母とみた。
「怖いね」
しばらく無言が続きその話は終了したと思った時だった。
突然母は無表情のまま
「いいじゃないの、
取り違えられたかどうかなんて調べなければわからないんだから。
明らかにして何の意味があるの。」
冷たく言い放った。その時の母はまるで別人のようで何か恐ろしいものを感じた。
幼少期から両親、特に母は教育熱心なところがあり、バイオリンに英会話と習い事づくめな日々だった。期待に応えたい私は人一倍努力し、沢山の賞状やトロフィーを獲得した。その度に母は「才能がある」と喜んでいたが、今思えば手に入れた子供の価値を確かめたかったのではないかと勘ぐってしまう。
私は本当にこの人たちの子供なのだろうか。
そして決定的な出来事が起きた。
私に妹が生まれ、彼らの可愛らしい黒目がちな瞳に、そして私の冷たげな瞳にも嫌気がさしてきていた高校生の頃だった。一通の手紙が届いた。
いつも通り、学校から帰ろうとした私は下駄箱の中に白い封筒を見つけた。
昔からこの手の手紙を貰うことはよくあったので、特に驚くことも無くバックに放り込んでおいた。
勝手に理想を押し付けて、直接話しかけもせずに一方的に思いを伝えるなんて、ラブレターって卑怯だよな。
ひねくれた事を考えながら堂々と封を開け手紙を取り出すと、一瞬、心臓を冷たい手で掴まれた様な感覚に陥った。
「私はあなたの本当の両親を知っています」
手紙にはそう書いてあった。
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