(三)-6
そうして事情聴取が終わった。私は席を立ち、会議室を出ようとした。
そのときに厚木刑事が、私にも聞こえるように呟いた。
「もしかすると、あなたの婚約が引き金になったのかもしれませんなぁ」
会議室のドアのところで、私は「エッ」と声をあげて厚木刑事の方を振り返った。
「いやもちろん、推測ですよ、推測。あなたのせいとか、そういう話ではありません。ただ、人間何がきっかけで変わってしまうかわからない、ということです」
私は「そうですね」とだけ小さく言い残し、新宿西警察署を出た。
(続く)
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