(三)-5

 そんな話をしたところで、私は二人の刑事に聞いてみた。

「ちなみに彼は一体何をしたのですか」

「先日の新宿駅での無差別殺傷事件があったのはご存じですよね」

 海老名刑事は言った。

「ええ。その日の朝、通勤中に電車が止まってしまって。その後も大変でした」

 とっさに私はそう答えた。まさか、彼がその事件の……。

「原冬真は、その容疑者なのです」

 先日の事件のことを言われて、まさかとは思ったものの、具体的にはっきりとそう言われると、驚かずにはいられなかった。彼に何があったのか。それに付き合っている頃、彼はそんなことをするような人間ではなかった。

「逮捕されたのですか」

「いえ、まだ逃亡中です。今、全力で行方を追っています」

 厚木刑事が力強く言った。そして今後私の所にやってくるかもしれないので、その際には警察に連絡して欲しいと頼まれた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る