第20話 地獄の鉄槌


―地下室。


「ここがあの地下室?」

外道どもを葬った場所でもある拷問地下室。すると奥へ入ると何やら声が聞こえてくる。冨樫だったのだ。


「2人はそこまでだ」

神楽坂は相良と吉田の2人を拷問の部屋

の手前で止まり、そこには富樫の様子と声がはっきりと聞ける。神楽坂はギィーっと鉄製の扉を開け、扉を閉めロックをかける。


「いきなり後ろから攻撃して気絶させ、こんなところに閉じ込めやがって!」

「喚いてないでさっさと、かかってきたらどうなんだ?」


神楽坂がそう言うと冨樫はナイフ片手に先制攻撃を仕掛ける。相良にもやってた自慢の4連突きをするも、たやすく避けられる。


「どうした?遅すぎるぞ」

冨樫は神楽坂の体に得意の4連突きをするも全て避けられる。するとナイフの軌道を突然変え、神楽坂の首を狙うがこれを避ける。

「舐められたものだ」

最初に体に突きを入れ、途中で軌道を変えて首を狙えば、上手く刺さる作戦だったようだが、まるで神楽坂には通用しなかった。


「何?!」

神楽坂は瞬時にしゃがみ込み、富樫に足払いをする。

「ぐぁっ!何だこいつは?!」

冨樫はその足払いで、見事態勢を崩し転ぶ。


「貴様を武装解除せず、私を楽しませてくれると思えばこの程度とはな」

神楽坂にしてみればお遊び程度にしか思っていないようだ。

「クソっ!なぜ避けられる!」


「貴様のナイフごときの軌道を読む事などたやすいこと。自慢のスピードらしいが、その程度なら吐いて捨てるほどいるな」

「クソっ!殺してやる!」


すると今度はナイフを片手に相手の胸を突くように冨樫は勢いよく、神楽坂の心臓をめがけ腕を伸ばし、突き刺す形になった。


神楽坂はそれを避け一気に間合いを詰め込む形で、前に踏み込み富樫の腕を掴む。

「もはやナイフの使い方も忘れたのか?そのやり方はご法度だろう?」

富樫の橈骨とうこつ部分をめがけ、神楽坂は肘を真上から勢いよく振りかざし腕をへし折った。


「んぎゃぁぁぁぁ!」

地下室中響き渡るほど冨樫は大声を出した。

「骨が一本折れたくらいで情けない。さてそろそろ答え合わせの時間だ」


するとジェイクが富樫を壁側につけ、縄で足と手をだけを縛る。

「どうする気だ!」

「これから質問に答えてもらう。私が最初に葬った結婚詐欺の男!あれは貴様が弟に指示したのか?」


「そうだよ!理沙って女だっけなぁ、あいつは人を疑うことを知らん馬鹿女だったよ。けど、結婚相談所の中では1番金を持っていたからな。だから騙すよう俺が指示した」


富樫がそう言うと、次に神楽坂の返ってきた答えをまとめると、理沙は起業しており、成功を得ることが出来たが、しかし出会いが全くなく真剣に出会いを求めた結果が富樫の弟というわけなのだが、言動に不信感を抱いた理沙は、最悪な事態になる前に神楽坂に相談してきたのだというのだ。


理沙は先手を打っていたのだった。誰か頼りになる人がいないか当時探していた。その探していた相手が神楽坂であった。そして次にキャバクラ嬢について神楽坂は富樫に問う。


「アイツはもともとうちの組じゃねぇ。ただ女と酒さえ与えりゃ、良い働きはしてくれた。一攫千金したとバカみたく言いふらしていて、その店の1番可愛い子を俺が紹介したんだ」


神楽坂が語る話には、随分とボロボロの状態で事務所を訪れたのだと言う。

子供には罪がない、自分も100万欲しさにアフターを受け入れた責任があると告げ、母子家庭として育てているそうだ。

ここまで話すも、一連の騒動は何かしらの形で富樫と関わり合っていることが解った。


「それで?一連の騒動は金と外道どもを使って欲望を満たすためだけにやったというわけだな?」

「当たり前だ!それ以外何があるんだ!!」


「なるほどなやはり貴様は粛清せねばならん外道のようだ」

神楽坂がそう声を荒げると、ペンチで腕が折れた手の指をはさみ思いっきり力を加える。


「んぎゃ~!!!」

続いて何本か同じように行う。するとすぐに富樫は根を上げる。

「もうやめて助けて」


「助かりたいの?貴様もさんざん欲を満たしてやってきたことだ、私も欲を満たしたい。そうだ金を得てないな金を振り込んだら助けてやろうか?」

「助けてください」

そういうと富樫はすべての金を神楽坂の闇の口座に、折れてないもう片方の腕で携帯を操作し、振り込みが完了した。


「うむ。では本番行こうか?」

「え?話が違う!!」

「貴様は人を疑うことを知らん馬鹿男のようだな。そんな約束守るわけがないだろう。なぁ、まずは失明してくれよ」

神楽坂は鉄製の5mm位の棒を富樫の目をめがけ投げ、両眼を潰した。


「あんぎゃァァ!!目がぁ!目がぁ~!」

「兄弟揃ってこれで失明だな。それに人の上に立つ人間が、その本質を全く見抜けんとは、その目は必要無かろう」


「ぐぁぁ・・・!」


「外道、私はまだ欲を満たしてない貴様には凌遅刑にしてやろう」



「ゴクリ・・・」

そう喉を鳴らすのは相良だった。

「何ですか凌遅刑って?」

「吉田、見ないほうがいいかもしれん」

「え?」

そう吉田は聞き返すもそれ以上相良は何も答えなかった。



「さて、始めようか」

神楽坂がナイフを持つと富樫の頬に軽く当てる。


「うわぁ何をするつもりだ」

「これは貴様が好きなナイフだよ。これで少しずつ削ぎ落とすのだよ。ほぉ〜ら」

神楽坂は富樫の肉を削ぎ落とす。

「ぎゃぁぁ!!」

「なぁ外道、鼻をくれ」

メリメリっと音とともに鼻を削ぎ落とす。

「耳をくれ」

ブチュッ!と、聞き慣れない音で耳が削ぎ落とされる。

「太ももの肉もくれ」

ベリベリっという音で血が滲み出て肉が削がれる。

「おぁぉぉぁぁぁ!!!!」

地下室中に響く断末魔の叫び。

「腹の肉もくれ」

抉れる肉の音。


それらを淡々と削ぎ落とす神楽坂。この凌遅刑というのは苦しみ続け、強烈な痛みを感じながらもすぐに死ぬことは難しく、どんどんナイフで削ぎ落とされる。


「女性にも辱めた罰も受けてもらうぞ睾丸くれよ」

袋の部分からナイフを切り込み2つの睾丸を落とす。

「ギャァァァーー!」

「どうだ外道?これで遺伝子も残せまい。次はどこにする?」


「もうもぅやめてくらさい」

か細い声を出して、冨樫は神楽坂に命乞いをする。


「人の皮を被った外道が何を言ってるの?なぁ見せてくれよ貴様の本性を!」

神楽坂はそう言って胸の肉に線を端から端まで切り込むように少し切る。

そして切り込み終わると、胸の肉が数センチ程度下へ垂れる。それを一気に下へ引っ張る。これは皮剥ぎというものだ。激痛でしかない。その痛みは計り知れない。

「フンッ!」

「あ"いだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

今まで受けた痛みでおそらく一番で、富樫の断末魔の悲痛の叫びは最高潮と言っていいだろう。

「なかなかにいい男じゃないか。貴様に皮は不要だな」


その姿は凄惨な光景で結局冨樫は全ての革を剥ぎ取られ、人体模型よりも酷い状態に仕上がっており骨も見える。その姿に神楽坂以外の人間は直視できない状態になっている。ジェイクでさえ目を背ける。


「あぁぁ・・・」

富樫はもうまともに言葉を発することができなくなっている。



「すげぇ・・・」

吉田は身の毛がよだつ思いをした。

「あぁ」

相良も同様な気持ちだった。2人はそれ以上言葉が出なかった。

すると神楽坂は鉄製の扉を開け、相良のもとにやってくる。

そうして数時間もしないうちに富樫は死んだ。その後はジェイクが処理をする。相良と吉田は引き続き事務所に戻ることとなった。


―神楽坂事務所内。


神楽坂が席に座ると落ち着いた静かな口調で話す。

「相良、実は奥さん探しておいた。今回富樫の居場所の情報収集の際に相良の行きつけのマスターに奥さんが行方不明の話を聞いてな。それで捜索していたら相良の奥さんも見つかってな」


「それでどうしたんですか?」

見つかったことに驚く相良。


「いかにも外道そうな奴と一緒になっていたので、私とジェイクで男の柄を抑え込み、股間に音が出ない拳銃で打ち抜き、血でベトベトになっているところを悲痛に叫ぶ男の姿の現場を奥さんに見せつけたら、二度と浮気しないって随分大人しくなっていたようだ。これからは相良の良き妻として貢献するそうだ。大事にしろよ」


神楽坂らしい恐ろしいやり方である。アレを失った男のその後の運命は分からないが嫁が戻ってくるならもう一度最初からやり直そうと相良は思った。


こうして神楽坂の躾により大人しくなった相良の妻は家族とともに暮らし始める。また相良自身もマスターの紹介で働くことができた。吉田はしばらくは神楽坂の手伝いと寮の手伝いをすることとなった。


彼の名は神楽坂文範かぐらざかふみのり外道には容赦しない男。

そんな彼の素性はまだ完全には明かされていない。

いつの日かそれが明かされる日が来るかもしれない。


ー第3章完ー

物語完結。




















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地獄の落し蓋 katsumi1979 @katsumi2003

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