27.再び大人へ
レッドオークの絶叫が遠く木霊する。
コタローたちが時間稼ぎをしている間に、他班員たちは子どもたちの手を引き、出口に向かって走っていた。
シュシュミラは大人形態を維持できていたが、ハイドラとティガは子どもの姿に戻っていた。
「ちょっと、ねえ!離してよ」
ハイドラが抵抗するが、班員は取り合わない。
「コタローを置いていけるわけないでしょ。私も戦う」
「お前が行ってなにになるんだ。今は一刻も早くここを脱出するんだよ」
「そうだ。外に出ればマリアがいる。あいつならボスモンスターでも倒せる」
「誰よそいつ。いいから離して」
「駄々をこねるな。お前みたいなガキじゃ相手にならないんだよ」
「ガキじゃない! シュシュミラ」
ハイドラが手を振りほどく。
名前を呼ばれたシュシュミラが意図を理解し苦い顔をするも、ポケットを漁る。
「しょうがないな。まあボクも安眠したいし協力してあげる」
ポケットから取り出した飴をハイドラに投げる。
五つの飴玉を飲み込むとたちまちハイドラの手足が伸びる。
子どもの姿に戻った時にズボンは落ちてそのまま置いて来てしまったので、白くすらりと伸びた太ももがあらわになる。
シャツの裾がギリギリ股下を隠している状態だった。
だがそんなもの構っている暇はない。
「あんた、それよこしなさい」
運搬係が護身用に持っていた弓と矢筒を奪い取る。
「ティガ!」
「おう!」
ティガも飴玉を噛み砕く。
大胸筋が盛り上がり、手足が太く節くれ立つ。
手足の爪が鋭く伸び、全身の体毛が伸びて金色の虎の姿となる。
「ぐるるる」
ハイドラとシュシュミラが獣化したティガの背に乗る。
「飛ばすぜ。しっかりつかまってろよ」
班員たちの制止の声を背にティガが走り出す。
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