魔法少女に興味ありませんか?

焦り男

プロローグ

 ────これが最後の機会。


 焦燥。逸る鼓動。噴き出る汗。

 眩暈、頭痛。重責に伴う身体不調、精神不安。


 ……無茶かもしれない。また失敗するかもしれない。

 そんな弱音が口をついて零れ落ちそうになる。

 ………他に適任はいないか。別に最適な手段はないか。

 散々考えて導き出した答えを、土壇場で渋ってしまいたくなる。


 また心拍が加速する。地球の端から端まで届いているんじゃないかと錯覚するくらいのボリュームで、一拍、また一拍と私を責める私の音。


 ────大きく、深呼吸をする。

 衣服が千切れそうなほど、皮膚が破れてしまいそうなほどに、心臓を掴む。


 ……それでも決めたのだ。


 託すのはやはり、あなたしかいない。


 あなたには奇跡に触れる運命と、それを叶える責務があった。

 そして何より、彼女への揺るぎない想いがあったはずだ。


 前を向く。

 覚悟を決めた瞬間、あれほどけたたましく響いていた心拍は、嘘みたいに落ち着いていた。

 今しかない。

 今、この瞬間しかない。

 勢いよく右足を出す。


 駆け寄った私は、呼吸も整わないうちに声を掛けた。


「そっ、そこのあなた! 魔法少女に興味ありませんか?」

「え?」


 いつかの怪訝な表情。

 誰よりもよく知ったあなたへ、私は用意してきた言葉を紡ぎ出す。

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