第48話閑話 元後涼殿更衣side
入内して幾年月。
帝のお情けをいただいているとはいえ、寵愛というには程遠くありました。
帝の寵愛を得ようと、御子を産もうと、所詮は更衣の身分。
立后出来るはずもなく、例え皇子を産んだとしても今の状況では『親王』は難しかった事でしょう。
内大臣家の庇護の元、漸く、人並みの扱いを受ける事が出来ました。
帝が私を北山に招いたのは、本当にただの偶然でしょう。
偶々、昔馴染みの更衣が軽々しく扱われているため、丁度良いとお考えになったに違いありません。
帝にとって私のような存在は、傍近くに控えていた『飼い犬』程度のお気持ちなのでしょう。
桐壺の更衣が身籠り、時を同じくして私の懐妊が判明し、謂れの無い誹謗中傷を受けていることを知っていながら放置なさる位なのですから。
父亡き今、幼い兄弟たちの出世のためにも御所を退出する訳には参りませんでした。
皇子であれ、皇女であれ、私はこの懐妊に賭けているのです。
あの身の程知らずな卑しい女。
かの女に仕えているだけのことはあります。
女房たちまでもが私を軽んじるのですから。
彼女たちは、権大納言という後ろ盾を無くした私が何も出来ない更衣と嘲笑っておいでのようですが、母方の中納言家は未だに健在。
地方の方にも顔が利くのですよ。
貴女達の出自も家系も調べ尽くしてあります。
彼女達の多くは地方に追放(結婚)されたと伺っております。
私の贈り物を喜んでくださっていると嬉しいですわ。
ほほほほ。
この魑魅魍魎の住処でただ耐え忍ぶだけとお思いならそれは筋違いというもの。
身分の高い女御方と違い桐壺の更衣にあからさまな嫌がらせが出来ないと思っているのでしょうね。
女御方からの嫌がらせで弱っていく桐壺の更衣を見て喜ぶだけの更衣と考えているでしょうか?それは心得違いというもの。
そこまで考えが及ばないからこそ浅はかな行為に走れるのでしょう。
帝の寵愛。
どれ程の寵愛を受けようと、どれだけ帝の御子を産もうと、
立場が不確かな妃とその御子の辿る末路など言わなくとも分かろうというもの。
後ろ盾がないのなら作ればいいのです。
私のように。
もっとも、
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