第33話:無双のお時間休憩です。
初めて上位個体にあった時よりは、明らかに冷静でいられてる。
鑑定──
個体名ウェアウルフ:ウルフの中位個体。群れの中で賢い個体。
──あれ? 上位じゃない、だと? あ、キングって付く奴が上位個体?
まあ、下位でも中位でも上位でも、ウルフと種族が同じなら瞬殺なんですけどね。
狼なら、仲間を呼ぶ習性があるだろう。呼ばれても面倒なので早速、首と胴体をおさらば転移。
魔石だけ転移も考えたけど、ゴブリンはそれでも問題ないとして、毛皮回収するウルフでそれしちゃうと死骸が不自然なので首を切り離す。そのあと一度ベリッと剥いで、魔石取り出した感を出しておく。ウルフ系はこれ大事。
汚れをとって魔石を回収、下位個体の魔石より一回り大きいサイズで、色は緑色だった。下位が青で中位が緑で上位が赤なんだ。
大分狩った感あるが、時間はまだお昼にもなってないくらいだ。まだ見ぬ魔物を求めてレッツゴー!
《ホント楽しそうね……》
はい! すこぶる気分がいいです。なんででしょう?
《なんでかしらね……》
相当ストレス溜まってたのね……。ボソッと女神さま。
ああ、なるほど。中崎のせいか、納得。
それからまたゴブリン少数と、ウルフ、ウェアウルフを討伐、回収。気付くとだんだん、ゴブリンと会わなくなってる感……縄張りか何かなのかな? ウルフが多いような気がしないでもない。そう思っていたら、やっぱりボスのお出ましだ。
ウェアウルフよりも、一回りか二回りデカい体して、賢そうな個体にエンカウント。
冷静に鑑定──
個体名ウェアウルフキング:ウェアウルフの上位個体。周囲のウルフ、ウェアウルフの群れの王。
──サイズ感ならゴブリンキングといい勝負かな?
でもウルフ系なら問題なし。仲間を呼ぶ前に、一斉に首と胴体おさらば転移。
見慣れてきた
森に入って、どれくらい進んだだろうか?広大な森だから、まだ中枢までは行けてない気がする。しかしウェアウルフキングのせいでもう袋がいっぱいだ。ウルフは一部、埋葬転移で処理したが流石に、キングは持ち帰りたい。
んー……取り敢えず、一度戻ってリーシアさんに話して、どうにかしてもらうか……。
◇───────◇───────◇
というわけで大荷物と共に、冒険者ギルドの裏手まで戻ってきたわけだが……これを持って入るのは目立つよな? まずはこれだけどこかに隠して、話してから出す方がいい気がする。
どこへ隠すか迷った結果、俺の自室へ転移。あそこなら、誰かに何か言われたり、取られたりすることはないと思う。現在では、一番安全な場所だ。
これで心置きなく中へ入る。入って受付を見るがリーシアさんの姿はない。なのでまた知らないお姉さんに繋いでもらうことになった。
「あの、いいですか?」
やっぱり、朝よりはここにいる冒険者は少ないみたいだ……並ばずに受付に来れた。俺は依頼や買取で並んだことないけど、並んでるのを見たことはあるからな。
「はい。どうかいたしましたか?」
朝とはまた別の、猫耳お姉さんだ……確か朝は茶色だったけど今回は灰色。
「俺ラルフっていいます。リーシアさんいますか? 担当してもらっているので、呼んでほしいのですが」
「え……リーシアさんが担当、ですか?」
困惑気味に首を傾げる灰色猫耳お姉さん。
リーシアさん……そろそろ、受付嬢内でくらい周知させておいてほしいのですが。毎度お馴染み──みたいなのいらないので。
「確認してもらえば分かると思います。」
「わ、分かりました。少々お待ち下さい。」
そう言って、背後の扉から消えていくのもまた朝と同じ。二度目だけど、もうそれいらないから……。
しかし待ちました! てほど待たずして、すぐに扉が開きリーシアさんが出てきた。灰色猫耳お姉さんは一緒ではない。好都合だ。
「ラルフさん、どうしました? 何かトラブルでも?」
心配そうにするリーシアさん。
「あ、違います。あのまま森へ行って、魔物を討伐していたのですが、少々荷物になるので、一旦引き取ってもらえないかな、と思いまして……できますか?」
自室に溜めておくこともできるが、魔物臭くなりそうで少し嫌だ。ベッドやソファーは論外、床に直置きになるだろう。
臭いとかも、転移できるかもしれないけど気分的になんか嫌だ。できることなら、さっさと金にしたいのもある。
「えっと……討伐証明部位のみで大丈夫ですよ?」
ん? 袋が本体でいっぱいだと思ってる?
「はい。討伐証明部位です。あ、ウルフ系だけは毛皮が使えるそうなので、本体ごとですが。その、まだ解体の仕方を知らないもので……」
ゴブリン系は右耳のみであとは魔石です。と俺。
「なるほど……ではその、肝心の魔物は今どちらに?」
見当たらないようですが……と、俺の足元周りを見るリーシアさん。
「あ、目立つと思ったので、今は別の場所に置いてあります。引き取ってもらえるなら持ってきますが……?」
事情を知っている、リーシアさんなら察してくれるだろう。と思っての発言だ。しかし、なぜかリーシアさんは不思議そうに首を傾げる。え、ちょっとリーシアさん?
「分かりました。では先に査定しておきますので、持って来てもらっていいですよ。」
ここにどうぞ。とリーシアさん。
え、それ本気で言ってます? あの量を? 絶対目立つから、持って入ってこなかったのに?
「あの……本当にここで大丈夫です? 目立ちません?」
最終確認。
「え……? ええ、大丈夫かと……念のため何の魔物をどれくらいか、お聞きしてもいいですか?」
そう、それ聞いてから判断してほしい。俺から言えって? それはなんか自慢みたいで嫌です。
「ゴブリン系とウルフ系が──多分、合わせて一〇〇体くらい……だと思います。」
意図的に小声で伝える俺。
「え……ひ、一〇〇!?」
大きな声出すリーシアさん。
俺が小声にした意味!
「リーシアさん! 声大きいです、俺が小声にした意味がないのでやめてくださいっ」
思わず注意してしまった。
すっすいませんっ! と謝り、自身の口を抑えるリーシアさん。手遅れですけどね? ほら、チラホラ視線を感じますよ……。
「し、失礼しました……。その、こんな短時間でそんな数とは思わず……あの、別室へ行きましょう。詳しい話はそこで……」
先ほどとは変わり小声で話すリーシアさん。
俺はリーシアさんの提案に承諾して、二人して視線から逃げるように別室へ移動した。俺の部屋移動って、逃げるように……が多い気がする今日この頃です。
そして移動してきた別室──応接室だと思う。そこに座る俺。リーシアさんはお茶用意してきますと言って移動してきて直ぐに再び出ていった。
最初から、別室で話せばよかった感あるが、俺から別室で──とか言い出すのは下心ありそうで怪しいしな……まあ結果オーライか。
《仕方ないわ。勇者なんて一〇〇年前の存在よ? まだ若そうだし、
なるほど。確かにもし俺が逆の立場でも、直ぐには受け入れられないだろう。言われて担当になっても、実際に実力を見たわけではないから半信半疑、それがリーシアさんの状態か。
リーシアさんに説明したリオラでさえ、俺の力を見たわけじゃないから、説得力はあまり無いだろうしな。
一人納得していると、扉がノックされお茶を持ったリーシアさんが入ってきた。
二人してお茶を飲み少し落ち着くと話を再開する。
「それでは改めまして、討伐した魔物を見せていただいても?」
「はい。ただ、もう大声は勘弁してくださいね……ここで声をあげられるとか、
こくりと頷くが、自信がないのか自分の口を手で抑えるリーシアさん。まあその方がいいでしょうね。
ではここら辺の空いてるところに……と自室に置いてある納品袋をイメージして転移。
ドサッと音を立てることもなく転移成功。まるで元からここにあったかのようなウルフ達の死屍累累だ。俺は見慣れたがリーシアさんは──
突然、目の前に現れたウルフ達の死骸に、目を見開いて固まっている。
大声出さなかったのは、褒めてあげるべきポイントかもしれない。
──まあそうなりますよねえ……受付嬢なんて仕事してたら、こんなの見る機会なんてそうそう無いだろうし。あってもゴブリンの耳のみとか、ウルフの毛皮のみとかかな? 知らんけど。
「えっと、大丈夫ですか?」
一応声をかけてみる。
リーシアさんは俺の声に、ビクッとすると恐る恐る俺を見る。
「は、はい……その、まさかウェアウルフキングを、見ることになるとは思っておらず、放心してしまいました……」
あー、解体の仕方知らないし、ほぼそのままこのデカイの持ってきたからなあ……袋に入らないから剥き出しだ……申し訳ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます