第四章 chapter4-2
「魔法……ですか?」
私は突然出てきた突拍子もない単語に自分の耳を疑いながら聞き返した。
そしてその疑いを否定しながら津々原は黙って頷く。
私はどう答えた物か判らずに隣に座った雪声の事を見た。
その彼女の表情も津々原が冗談を言っているとはとても思えなかった。
「端的に言おう、私は魔法を管理するとある組織の人間なんだ。君達のやっているRPGでいう魔法ギルドみたいな物って言うと判りやすいかな?」
津々原の話す言葉が更に私の思考を更に混乱させた。
「魔法……ギルド?」
「そうだ、そして君達はその組織絡みのごたごたに巻き込まれた」
私は津々原の言葉を必死に理解しようとしていた。
「彼らの目的は私でした。だから彼女は私の代わりに攫われたの。だから逆に言えば目的を達成していない以上すぐにみかさをどうこうするとは考えにくいと思います」
「……え……ええっと……」
理解しようとしたが今の状況を更に理解できなくなり、混乱した私は二人のことを交互に見た。
「さすがに今の説明でわかれというのは無理があったか……」
「私は雪声がアイドルだから、事件が起きていたんだと思ってました、でもそうじゃないんですね?」
「全く無関係、ということはないかもしれないが違う」
二人の言葉を整理しようとしていたが、一息ついたと津々原の言葉が更にそれに拍車をかけた。
「君はそこにいる『調 雪声』が人ではないと言ったら信じられるかい?」
「人では……無い?え……だって……」
人ではない、そう言われた雪声の事を私はじっと見つめていやいやと首を横に振った。
「何を言ってるんですか、人じゃないなんて……」
津々原の真意をはかれずに私は聞き返した。
「さっきあれが警察沙汰にしないでおこうとしたね、それはなんでだと思う?」
「それは……」
そして私は先ほどからの違和感の正体に気がついた。
「さっきから津々原先生が、雪声のことを『あれ』と呼んでいるのは……まさか……」
「ああ、人で無いモノを名前で呼ぶ必要は無いだろう?」
私の中で津々原の言葉で何かがはじけた。だが自分自身にもそれに気がつかないほど動揺していた。
人ではない、その言葉が指す意味がどういう事なのか、私にはまだよくわからなかったが、ただその言葉の示す意味が普通ではないということだけははっきりと理解できた。
「……みかさの事は助けてもらえるんですよね?」
はっきりと警察には頼らない、そう宣言された私はまさかそんな事はないと思いつつ二人に聞いた。
「ああ、当然だ。今回のことは我々の不手際だし、今回の実験にも支障をきたす。だから助けるよ」
津々原の話す言葉には真剣さは感じられた。
しかしその中には優しさは一切感じることが出来ず、まるで作業するかのような感じさえして背筋が寒くなり私は小さく体を震わせたのだった。
雪声がテーブルの下でそっと震える私の手を握りしめる。
「雪声……?」
「偽物の私の為に……ごめんね」
そう言って小さく呟く雪声の事を私は恨む気持ちにはなれなかった。
むしろ逆に握られた雪声の手のぬくもりに私の気持ちはほっとするのを感じていた。
その自分の気持ちを雪声に何故か知られたくなくて、うつむきその瞳に涙を浮かべる彼女の顔を私は見ることが出来なかった。
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