第48話 余暇

徳寿丸は、元就に呼ばれていた。

「父上、どうなさいましたか?」

徳寿丸は元就の言葉を待つ。


「お主は、まだ松井殿が怖いかの?」

「はい」

あっさりと答えが返ってくる。

元就は苦笑いした。


それもそうだろう。

毛利軍の士気を削ごうとした尼子の計略なのか、それとも松井のただ突発的な思い付きか……、元就たちは真相が測りかねるが、いきなり誘拐しようとした男に、あっさりと懐くような子ではなかった。

警戒するのも仕方のないことだ。


その頃、松井は隆元や悠月、くるみらとともに城外で散策をしていた。

山の中だから、山菜なども色々見つけられるだろうか、と松井は少し考えていた。

だが……。


「血の跡……」

「戦の直後じゃ、仕方あるまい」

そうだ、つい最近までここは合戦場だった。

松井は改めて、ここが現代ではなく戦国の世であることを思い知る。


「さてと、あまり遅くなっても良くはない。そろそろ戻るとしよう」

「そうですね」

隆元は吉田郡山城へ先導する。


だが、隆元の心には一つの疑念が浮かんでは消えた。

『もし自分が先の歴史を知ることができたのなら……』

そう思ってしまう自分に、隆元は戸惑った。


隆元たちは、束の間の平和の時間をゆったりと過ごした。

隆元は絵画や仏典書写などを愛する教養豊かな人物である。

精神統一の為か、趣味なのか……。

隆元は絵画を描いて過ごす時間としていた。


悠月は松井と共に歴史の本を読み漁った。

当時の本は、思っていた以上に字が達筆すぎて読めない。

「んー、これはどう読むんだ?」

「悠月、これなんて読むんだい?」

「わからん」


くるみは炊事を手伝う。

「なるほど、こうやって調理すると良いのね……」

「ええ、味付けはこうすると良いわ」

くるみは言われたことをメモした。

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