第36話 合流

陶軍は毛利軍の救援にと、吉田郡山城に向かって進軍を続ける。

そして、立ちふさがっていたのは……。

武田信実・牛尾幸清以下3,000余りである。

「やれやれ……。皆の者、突っ切るぞ!」

陶は苦々しい顔で采配をする。


「なるべく、犠牲を出さぬようにせねばな……。」

陶は少し力が入る。

「皆の者、我に続け―!」

陶は先陣を切った。


「迎え撃てー!」

信実や牛尾は果敢に切り込んでくる陶を迎え撃とうとする。


「皆の者、ひるむなー!」

陶は必死に鼓舞をし、切り抜ける。

何日もかかり、吉田郡山城に辿り着いたのは一週間ほどが経過していた。

「大分遅れてしまったな……。」


陶は住吉山に陣を張り、幟や旗印をかかげ、毛利軍に対して陣太鼓などを大きく打ち鳴らした。

「おお! 陶殿じゃ!」

元就はすぐに陣太鼓の音に気が付いた。

将兵らも、ざわざわとしていたが、陶の顔を見るなり士気が上がって明るい顔をするようになった。


「使いの者を出せ!」

元就はすぐに陶を吉田郡山城に招待した。


「殿!ただいま戻りました!」

「お主ら、よくぞ! よくぞ無事であった!」

元就は二人の兵たちとの再会を喜ぶ。


「陶隆房、救援軍として参りました」

「ああ、そなたか。誠にありがたい!」

隆元、元就はともに陶らを丁重にもてなした。

元就はふと策を練っていた。


「元就殿、年が明けてより総攻撃を仕掛けるというのはいかがでしょう?」

「さようじゃな」

元就はその言葉に合意を示した。


「これなら吉田郡山城の戦いは歴史通りに終わりそうだな」

「ええ。それでも、最後まで油断はしないでね」

悠月とくるみは、様子を見て少しほっとしていた反面、最後まで気を抜かずに見守ることを誓った。

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