第31話 三兄弟
「徳寿丸」
「あ、兄上!」
隆元は徳寿丸に合わせてかがむ。
「あまり父上を困らせてはいかんぞ」
「はい、兄上!」
徳寿丸は頷いて返事をした。
隆元は徳寿丸を抱っこする。
「みんな、早く平和に暮らせると良いですね」
「そうじゃな、徳寿丸。本当にそう思う」
「徳寿丸だけずるい!」
少輔次郎、のちの元春はわざと冷やかす。
「なんじゃ?お主も抱っこしてほしかったのか?」
からかうように隆元は笑う。
「別にそうじゃない」
プイッ、と背を向ける。
その様子に、隆元と徳寿丸は笑った。
それをそっと元就は微笑ましく見守った。
「徳寿丸は戦が嫌いなのか!」
「もちろんですよ、兄上」
だが、毛利の家で生まれた以上は関わっていくことになるだろう、隆元と少輔次郎はひそかにそう思った。
いつの日だったか……。
雪合戦をしたことがある。
少輔次郎と徳寿丸で家臣を分け、本当の合戦さながらの雪合戦をした。
「よーし、投げろ投げろ!」
勢いに任せて、少輔次郎は指揮を執る。
だが、次の瞬間。
パシンっ!と音がした。
「いてー!」
徳寿丸が投げた雪玉が少輔次郎の顔に当たっていた。
それも、投げたのは徳寿丸陣地からではなく、背後から回って投げつけていたようだ。
家臣たちも、徳寿丸の隊はいくつかに分かれて四方八方から取り囲み、雪玉を投げつけていた。
「うむ……」
元就はその様子を見て、少し先の事を決めた。
少輔次郎は勇猛果敢で勢いよく攻めていくので、武勇に長けている。
徳寿丸は軍略に長けている。
元就はそれを鑑みて、策を練っていく。
それは、毛利家のために。
隆元は、その当時大内義隆の元にいたので戻ってきてから秘密裏に相談を受けた。
「父上、私は父上のお決めの通りに動きます。弟たちの采配も、私は反対しません」
「さようか」
吉田郡山城の戦い後のことを、元就は描いていた。
「今はこの戦を終わらせるのみ、じゃな」
元就はぼそりと呟いた。
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