第26話 策謀

元就と面談し、ようやく気持ちの落ち着いた悠月。

だが……。


その翌朝の事である。

再び、火災が発生した。

尼子方による放火が原因である。


元就は采配を振るう。

「南西の太田口には通、元景らに出陣してもらう。まずは多治比川に兵を30名ほど置いてすぐに退却させ、誘い込んで攻撃するように!」

「ははっ!」

渡辺通は作戦の隊長を担うこととなった。

「まるで釣り野伏みたいですね」

「おお、お主よく知っておるな!」

隆元は感心したように言った。


城の南側正面にあたる広修寺や祇園の縄手にも、火の手が上がっていた。

「吉田郡山城の南側が、結構攻撃されているな……!」

「こちらは我が率います。よろしいですか、父上!」

「構わぬ。隆元、頼んだぞ」

「はっ!」


南側の方が被害も甚大、なおかつ兵も多かった。

「ふむ……」

「松井……、もしかして何か尼子方へ言ったのだろうか?」

「分からんが、警戒をしておくに越したことはあるまい」

隆元はやはり優しく言う。


わあわあと大きな声が他方から聞こえた気がした。

恐らく、南西の方だろう。

「あちらは首尾よく終わったようですな」

「うむ。父上の作戦通り、うまく撃退できたのであろうな」

「釣り野伏、息が合えば恐ろしい作戦に代わりますからね」

「その通りじゃ」

馬が走ってくる。

そして、兵は馬から降り、隆元に向けて片膝をついた。

「伝令! 渡辺殿を主力とした南西隊、尼子の撃退に成功! 尼子方は陣へと引き返しております!」

「こちらも負けてはおれぬな」

「さらに、お伝えしたき儀が。高橋元綱や本城信濃守らをも討ち取りましてございます!」

「うむ!」

隆元は頷いた。

「父上にも報告を頼む」

「ははっ!」

兵は馬を飛ばし、元就の元へ向かった。

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