第11話

 そうしていると、扉を叩く音が聞こえてきた。

「どうぞ」

 とイネスが返事をするとソーマスが入って来て、

「ご夕食の準備が整いました、お食事のお部屋までご案内致します」

「わかりました」

 イネスはそう言うと、紙束を纏めて立ち上がると部屋を出てソーマスが鍵を閉め、マフラーを巻いた姿のままその後を付いていく。

 迷路のような城の中を進むと、食堂の部屋へと案内された。細長いテーブルの正面の席はまだ空席で、その横の席には既にシャーリーとエリザが座っていて、イネスは案内されるがままシャーリーと正面になる席に腰掛けた。正面にシャーリーの顔があってイネスは顔を赤くしてしまう。

「どうだ、少しは参考になったか?」

 そう聞いてくるシャーリーに、例の紙束の事だと分かるとイネスは、

「ま、まだ途中までしか読めていなくて、ただどういった性格なのかは分かりました。結構な乱暴者の様で……」

「だろう?私が気に入らないのはそこだ」

「……はぁ」

 シャーリーはパラテルル神の事を思い出してしまったのかむぅとした表情を浮かべる。それを横でじっと見つめるエリザ。

「まぁ、明日までには読んでおきますので、それから対策を練りましょう」

「そうだな、今はそうするしか無いな」

 そう話していると、バンデンブランが部屋へと入ってきた。その手には杖を持っていて、左足に体重をかけてゆっくりと歩いてくるのだった。

「待たせてしまってすまない」

「別にいいよ、兄さん忙しいんだし」

「私達知ってるから気にしないで、兄様」

 そう言う二人に小さく笑みを浮かべるバンデンブランに、イネスが少々緊張気味に背を正す。そうして、

「あの……テーブルマナーは詳しくありませんのでお見苦しい点がありましたらすみません……」

「デマントイド殿、貴方は客人だ、そんな事は求めていない。好きに食べてくれて構わない。」

「……ありがとうございます」

 と言ってペコリと頭を下げる。

 そうしていると食事が運ばれてくる。美味しそうな彩りの前菜が運ばれてくると、それを口にしながらバンデンブランはイネスに問いかけた。

「その、不躾で申し訳ないが、ペントランド神とのやり取りを聞いても構わないだろうか?」

「ペンとランド神との……ですか?構いませんが……楽しい話ではありませんよ」

 そう目線を落として前菜を見つめるイネス。けれどバンデンブランは、

「いや、興味がある。是非聞きたいのだが」

「私も興味がある」

 そうシャーリーも加わると、イネスはため息を吐きながら思い出すようにぼんやりとした目で、ゆっくりと語り始めるのだった。

「あれはですね、ザイベリー国第二の都市ビオラルの郊外に居た時の事です――

 僕は昼食を取ろうと、郊外にある先の大戦で使われたという兵器の残骸を雪よけにしながら茶を用意して、市場で買ったバゲットサンドを食べようとした時です。

 どこからともなく空に『神』が現れました。

 金の翼に金の長い髪を結い上げ、均整の取れた逞しい体に黒い長袖であるけれども明らかに生地の薄い服を纏い、ゆっくりと僕の前に下りてきました。

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