第7話
夏休みが終わって新学期が始まった。
彼女は毎日、楽しそうに色んなことを話している。でも時々、少し変な質問をしてくる。
「君の住所は?」
唐突にそんなことを聞いてくるのだ。僕が答えると、君はメモ帳に僕の住所を記録する。僕は不思議に思って彼女を見ていた。
「年賀状書いてあげる。」
彼女はいつも通り花のような笑顔を浮かべた。
「まだ夏じゃん...」
僕がそう言うと、彼女はあっははと声をあげて笑った。その笑顔を見て、僕もつられて笑ってしまった。
「文化祭楽しみだねぇー」
彼女は雲ひとつない空を見上げて、そう呟いた。
「あ、君友達いないでしょ?私が一緒に回ってあげるよ。」
彼女はいたずらっぽい笑顔を浮かべて、そう言った。
「余計なお世話だよ。」
そう言いながら、僕も少し文化祭が楽しみになった。
文化祭の日、約束通り、僕達は一緒に回った。昨日までは楽しみだったのに、今はもう帰りたい。色んな人の視線を感じて、全然楽しむ所の話じゃない。
そんな僕の隣で彼女は幸せそうに、さっき買ったばかりのクレープを頬張っている。
「君もどう?」
そう言って彼女は右手に持っているクレープを差し出す。
「いや、僕、甘いものはちょっと...」
「なーんだ、でも、そんな気はしてた。」
君はもくもくとクレープを食べていた。そんな彼女を見つめている男子はこの辺りを見渡しただけで何人も目につく。彼女はモテる。改めてそれを実感した。僕なんかと回らなくても、他にも人はいただろうに。好きな人はいないのだろうか。そんなことを考えていると、彼女がクレープを食べ終えたようだ。
「次どこ行こっか?」
そう笑った彼女の口の端にクリームがついていた。
「クリームついてるよ。」
「え?!うっそ?!恥ずかし〜」
慌ててクリームをとる彼女を見て、僕はとても愛おしいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます