第3話

 夕飯とお風呂を済ませて、私は自分の部屋へ戻った。


 机の上に置いてあるスマホがピカッと光っている。姫和からのLIMEメッセージだった。


「うちは先にログインしてるね!転送先は【始まりの街】に設定するんだよ!じゃあ、ゲームの世界で待ってるね!」


 なるほど、ログインは先に済ませたのか。私も急がないと。


「私もこれからそっちに行くね!」


 そう返してから、VR機器本体の電源を入れて、布団の上にごろんと寝転んだ。


「おっ!こんばんは、サクラちゃん!【Free World Online】のインストールは無事に終わってるよ!早速、起動してみる?」


 「はい」と返事をすると、AIのメルちゃんが元気よく答えた。


「OK!じゃあ、起動するね!【Free World Online】の世界へ、いってらっしゃい!」


 特にトラブルもなくゲームは起動し、タイトル画面が表示されたあと、ロードが始まった。


 1%……10%……25%……50%……そして100%。


 ロードが終わると、何もない白い空間が広がっていた。


「ようこそ、【Free World Online(通称:FWO)】の世界へ。これより、あなたの分身となるアバターの作成を行います」


 無機質な声が、脳内に直接響いてきた。


 こっ……こいつ……脳内に直接……!?


 なんて、ちょっと中二病っぽいリアクションをしつつも、VRなんだから当たり前かと自分でツッコミを入れる。


 目の前に、先ほど設定した基礎データや各種情報がホログラムでパッと表示された。


 どうやら、容姿は少しだけカスタマイズできるみたいで、髪型・髪色・目の色をいじれるらしい。


「リアルじゃショートだし、ゲーム内ではセミロングにしよっかな」


 ちょっとだけ気分を変えて、肩にかかるくらいの長さに。髪色と瞳の色はそのまま黒でいいや。


 保存っと。


「次に、種族の選択を行ってください。※種族によって能力値に補正がかかります」


 表示された一覧を見ると、色々な種族がある。


【種族一覧】

•ヒューマン(人間):バランス型のオールラウンダー。

•エルフ:魔法に特化。でも打たれ弱い。

•ドワーフ:筋力はすごいけど、足が遅い。

•獣人:動物ベースの種族。

      鳥にできることは大抵できる。

      狼にできることは大抵できる。

      魚にできることは大抵できる。

      象にできることは大抵できる。

      猫にできることは大抵できる。


など、他にも種族があるみたいだ。


 いやいや、「○○にできることは大抵できる」って説明、ざっくりすぎない?

 んー、ドワーフが足が遅いから逃げる時不利になるし、エルフは魔法特化でなんかかっこいいけど、打たれ弱い。

 獣人は......説明がざっくりすぎてよくわからない!


 結局、バランスのいい人間を選択することにした。


「種族:人間が選択されました。次に、スキルを3つまで選んでください」


 スキルの一覧は結構多い。

 でも、とにかくダメージを受けたくないから......


【選んだスキル】

•《HP自動回復Lv.1》:時間経過でHPが少しずつ回復

•《魔法耐性Lv.1》:魔法ダメージを軽減

•《物理耐性Lv.1》:物理ダメージを軽減


「スキルが選択されました。次に、ステータスポイントを振り分けてください」


 STR(攻撃力)、VIT(体力)、INT(魔力)、AGI(素早さ)、DEX(器用さ)――全部平均的に50ずつ振り分けて、バランスタイプに仕上げた。


「設定が完了しました。以下があなたのキャラクター情報です」


【キャラクター情報】


名前:サクラ

性別:女

種族:人間

Lv:1

HP:50/50

MP:30/30

STR:50

VIT:50

INT:50

AGI:50

DEX:50

スキル:

・HP自動回復Lv.1

・魔法耐性Lv.1

・物理耐性Lv.1


 「はい、問題ありません」


「次に、開始地点を選択してください。以下の3つから選べます」


【開始地点一覧】

•【始まりの街】:標準的なスタート地点

•【草原】:モンスターが即出現。戦闘あり。

•【洞窟】:草原と同じく、即バトルモード。


 いや、初期装備もない状態で戦闘とか無理ゲーでしょ。姫和も【始まりの街】って言ってたし、ここ一択だな。


「【始まりの街】が選択されました。これで、キャラクタークリエイトは完了です。これより転送を開始します」


 ついに、いよいよゲームの世界にダイブする瞬間が来た。

 少しドキドキしてきた。


 ――が、次の瞬間。


「……予期せぬエラーが発生しました。強制的に種族、スキル、ステータスの全ての項目が変更されます」


「……は?」


 一瞬、頭が真っ白になった。


 え、ちょっと待って待って!せっかく作ったアバターが消えるの?それは困るって!


 でも、やり直せばいい話だし――


「転送を開始します。カウントダウン、5……4……」


「って、転送すんのかい!!」


 カウントダウンは止まることなく進んでいく。私の身体が徐々に光に包まれていく。


「3……2……」


「ちょっと待ってよ!ストーーップ!」


「1……0。転送」


「ええええええーーーーー!!??」


 叫びながら、私は光に飲み込まれ――気づけば、【始まりの街】へと転送されていたのだった。

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