勝利の2Pクロス(6)

「別斗、ラスいちもサクッといってやろうぜ」

「いや、待て。ここはやっぱりソソミ先輩に締めてもらおうぜ」


 どうぞ先輩。そう云って別斗はエスコートするように右手で促した。


「あらそう? なんだかおいしいとこだけ持って行くみたいで気が引けるわね」

「なに云ってんすか、金は先輩持ちっすよ? その権利はあるに決まってるじゃないっすか」

「わたくしとしては荷物でしかなかった重い100円玉がすっきりして清々したわ」


 本人にしかわからない感覚を吐露しながら、ソソミは云われた通りガチャガチャの前に立つ。


「……にしても、本当に同じキャラクターしか出なかったわね。まさか最後に残ったひとつだけが別ってことは確率的に低いでしょうし」

「ですね。でも、全部開けなきゃ〈すべてそうであった〉という証拠にはならないですから。申し訳ないですけど全額購入させてもらいます」


 もちろんよ。見え見えな世辞を述べるあすくへ軽く笑みを返し、ソソミがいよいよ最後の100円を投入する。しなやかに左手でハンドルを握り、今日何度目かわからないくらいに繰り返した回す動作に入る。

 ……そのときである! ハンドルのぐりんぐりんを拒むタイミングで、立て付けの悪い駄菓子屋の引き戸が勢いよくバチコンと開かれたのだ。


「あぁーあぁ! うわあぁーあぁー!」


 中から出てきたのは、脳天部が薄いツインテールに伸びた泥棒髭、それだけでも珍奇さ抱かせる容姿だったが、くわえて恰好は黒いハーフパンツによれよれのランニングシャツをインし、白いハイソックスをめいっぱい引き上げた〈おかあさんコーディネート〉の小学生ファッションに身を包む、40代くらいの肥満体おっさんだった。

 おっさんあろうことか中から踊り出てきた勢いそのまま、ソソミの見目麗しいelfな顔面5センチまで顔を近づけると、匂い立つような粘っこい唾を飛ばしながら、


「だめだめだめだめ、だーめだめだめだめ、だぁーんめ!」


 その怪奇おぞましい行為たるやまるで凶暴なカバ、川面からガバッと大口開けて威嚇するがごとく。あまりの衝撃にソソミ、2メートルも吹き飛ばされて尻餅をついた。


「ソソミ先輩!」


 いち早く救護行動へ移行する別斗。倒れたソソミの身体を支えると、ゆっくりと抱きかかえる。さいわい怪我はしていないようだが、制服が汚れてしまった。我に返ったジャレ子も傍に来て、ウェットティッシュを差し出している。

 その一部始終を確認して、あすくがおっさんに詰め寄った。


「おいアンタ、あぶないじゃないか。ソソミ先輩が怪我するところだったぞ!」


 この剣幕におっさん意に介すことなく、首がねじ切れるほど横にブルブル振りつつ、


「だめだめだめ! だめったらだめなの!」


 駄目の一点張り。要領を得ない会話に、さすがのあすくも困り顔で3人に助け船を求める。


「もしかして、わたくしたちのやっていたガチャガチャをこれ以上やっては駄目だと云っているのではないかしら?」


 悲惨なメに遭っても聡明さを失わないソソミが諭すように告げる。

 すると、このソソミの言が的を射たらしく、


「そうそうそうそう、あはは。あんた美人で賢いなあ。おでのお嫁さんにならないか?」


 鈍重な巨躯でドタドタとソソミに迫り、再び異常接近サード・カインドを図る。その罪深き行為を見過ごせずあすく、


「おい、ソソミ先輩に近づくな!」


 抑えようと肩に手を置いた。

 が、


「おまえさっきから生意気だなあ。おで生意気な男は嫌いなんだど」


 野太い剛毛な腕で胸を突かれ、もんどり打って派手に倒されてしまった。


「なにをするんだ!」

「おでの邪魔をするからだど。おで、この美人ちゃんをお嫁にするんだ。こんな美人ちゃんならねえちゃんも喜んでくれるんだど」


 やれやれ、とここで真打登場。いっこうに進まぬ話にしびれを切らした別斗が一歩前に出る。


「なあアンタ、ひとりで盛り上がってるとこ悪いんだけど、女の子を威嚇したり他人を突き飛ばしたり、いったいなにがしたいんだ? おれたちがアンタになにかしたってのかよ」

「おまえらガチャガチャ全部買おうとしてた。からっぽになるまで買おうとしてた。ねえちゃんに怒られる。おで怒られるのやだど!」

「ああん? もしかしてアンタ、この駄菓子屋の店主か?」

「おでか? そうそう、おではこの店の〈おおなあ〉だあ」


 よもや青天の霹靂である。それは偏見以外の何者でもないが、目の前の得体の知れない珍妙な風体のおっさんが駄菓子屋とはいえ販売店の店主だと夢にも思えない。身なりといい言動といい、どう考えても無邪気な子どもたちの格好のネタにされる我が町の〈ヘンなひと〉といった具合いの、場合によっては近寄ってはならぬアレな存在にしか見えないのだ。


「でもまあ、店の人間ならちょうどいい。ここのガチャガチャの景品にはあきらかに人為的な偏りがある。これは景品表示法違反というやつだぜ。悪いけど然るべき措置をとってもらおうじゃねえか」

「んなこと云われてもおで知らないど。ねえちゃんに云われてやってるだけだど。でも、ねえちゃんはいつも正しい。ねえちゃんは間違ったことはぜったいにしないど。おまえ、ねえちゃんがやってることを疑うのか?」

「そうかそうか、アンタに云っても無理だよな。じゃあ、そのねえちゃんってひとに会わせてくれねえか?」


 半ば強引に話を進める別斗、駄菓子屋の中にそのねえちゃんがいると考え、引き戸を開こうと手をかけた。

 そのとき、


「あたしゃここにいるよ」


 呼び声に振り返り、ギョッとする。そこには買い物帰りの50代と思わしき女性がいたのだが、その格好たるや奇抜で空気の読めないコスプレ、まるでこちらが気恥ずかしくなるような大胆な衣装だったものだから、驚愕におののいた。

 いや……、ほとんど恐怖、狂気である。なぜならその中年女性のお召しになられている物とは、うら若き乙女の象徴であるセーラー服だったのだから。いくら三つ編みふたつこしらえようとも、枝毛と白髪のコンボでダメージ負った髪や如実に隠せない目尻の小皺とほうれい線などに視線誘導されてしまい、それら本来のポテンシャルを著しく損なってしまっていることに、得も云われぬ疲弊感が募ってしまう。

 そこへもって買い物袋からはみ出たネギがひょうきんなミスマッチを催して、相対する者に高度な理解を要求していた。


「あたしがバーロウの姉だよ」

「バ、バーロー!?」

「あたしの弟はバーロウって名前なんだ。馬場上把亜郎ばばがみばあろうってね」

「お、おう……」


 これ台所に持って行きな。買い物袋を差し出すとツインテのおっさんことバーロウ、まるで従者のように恭しく受けとって上がり口に消えていく。


「どうやら弟が迷惑かけたようだね。それについては謝るよ」


 セーラー服のおばさん、奇抜な風貌に似合わず律儀に頭を下げる。しかし、その濁った瞳には少しも反省はない。食えねえババアだな。別斗はへっと鼻を鳴らした。


「謝る必要はないさ。それよりこのガチャガチャの有様を説明してくれねえかい? さっきからおんなじ景品しか出ないんだが?」

「景品表示法違反って云いたいんだろ? そいつは的外れな指摘だ。ガチャガチャに景品表示法違反は適用されないんだよ(※ケースバイケースです)」

「なん……だと?」


 おばさん鬱陶しそうに三つ編みを後ろへ流すと、胸ポケットからラッキーストライクを抜き出して一本火を灯す。


「つまり、ちょっとおんなじ景品が出てきたくらいでガタガタぬかすんじゃあないよってことだ」


 ドヤ顔で鼻からどわっと煙を吹き出すセーラー服姿の50代女性は、ぶん殴りたくなるほど腹立たしい。


「ちょっとどころじゃあないだろ、1個残して全部だぞ! どうせラスイチも六眼鉄なんだろ?」


 煮え切らない態度に、珍しくあすくが激昂する。さすがのあすくもババア相手ではイライラが倍増されるらしい。


「それがどうしたんだい。たまたまだろ」

「たまたまだって?」

「前の客が他のキャラを出しまくって、たまたま六眼鉄だけがマシンに残っちまってた可能性だってある」

「んなわけあるか。どんだけの確率だと思ってんだよ。たとえその偶然が起こったとして、マシンの構造上、物理的にあり得ないだろ!」


 詰め寄るあすくにババアも堪忍できなくなったのか、はたまたそれが本性なのか、一昔前の任侠ものの役者よろしく腕まくり決めると、


「やいやい、てめえこの青二才の包茎チンカス野郎が。云いてえこと云わせておきゃいい気になりやがって」


 その気迫に意表を突かれ、あすくが少したじろいだ。


「なにが物理的に確率が低いだ。てめえらが勝手に100円玉ぶっ込んで玉っころ出しまくった結果だろうがよ。中身が全部おんなじ景品だったからってよお、それがどうだってんだよ、おおん?」

「ばあさん、こんなアコギな商売やっといて開き直りかよ。そりゃおんなじキャラが100回近く出るのは偶然の可能性もなくはない。ないとは云わない。けど、自分の好きなキャラが出るのを信じて買ってる純粋なキッズの心はどうするんだ。アンタ、そんな子どもたちを思って良心が傷まないのか!」


 みなが唖然とした。それはあすくの胸を打つ見事な説教のせいではけっしてなく、よもや彼の口から感動に値する正義心が説かれたことが、誰もがぽかんと言葉を失うほど驚きに満ちていたからに他ならない。いまやあすくまるで主人公、自らのモブ感を払拭したかのごとく敢然とババアに立ち向かう。その血気盛んな心意気、伊達眼鏡を指でクイクイするのすら忘れてしまっているほどだ。

 しかし、そんなカッコつけた彼をも意に介さず。タチの悪さを刻み込んだような小皺顔でタバコを堂々ふかすババア、


「別にあたしゃなんとも思わないね」


 平然と宣う。


「買ったそいつが悪いんだ。そいつが泣こうが喚こうが自己責任じゃねえか。そこに年齢もへったくれもねえ。それに、どうやらてめえら、このガチャガチャが六眼鉄しか入ってねえこと知ってて買ってやがったみてえだしな」


 1回の吸い込み量がハンパないのか、アッハッハと高笑いで吐き出す煙の多さといったら野焼き並みである。あたり一帯がもくもくと紫煙垂れ込め、ほんのり重くなる視界と空気に辟易する。


「食えねえババアだぜ」


 別斗、さきほどの思考を今度はきっちり声に出した。


「なんだいクソガキが。文句でもあるってのかい。まあ大方、おんなじクラスの馬鹿がこのガチャガチャで散財したのを聞いて取り返しにでもきたんだろうが、人生そううまく行くもんじゃあねえよ。ちょっとお高い勉強代だと思って、はやく帰ってクソして寝な」


 さすがにババアと云われては気分が悪いと見え、ババア中指立てつつやや前時代的な煽り文句を飛ばす。

 とはいえ、ここまできて〈はいそうですか〉と帰るわけにはいかない。このババアもとい駄菓子屋をぎゃふんと云わせたいのももちろんだし、なによりソソミ先輩に危害を食らわせておいて反撃せずに引き下がるのは納得いかない。

 あすく、ここは一行のブレーン役としてなんとか一矢報いたいと苦虫噛み潰し、思考を爆走させる。とにかくこのババア、一泡吹かせられないだろうか。


「なあ別斗」


 友の肩に手を置き、協力を求める。

 すると。

 なにかに気付いたのかババア、火を点けようと新しく咥えた一本を元に戻し、


「おい、そっちのガキ。もしかして、てめえ別斗……荒巻別斗ってクソガキじゃねえだろうな?」

「そうだけど? なんだよばあさん、おれのこと知ってんのかい?」


 この質問には応えず、年齢不相応な上目遣いで何事か思索する素振りをすると、


「てめえら、散財した金を返して欲しくねえか?」


 含みのある笑みで銀歯をちらつかせる。


「ああ? どういうことだよ」


「なんだい、察しが悪いねえ。〈『2Pカラー』に楯突く気概のある高校生〉ってお触れを受けてたが、こりゃ見込み違いかね」


 空気が一変する。

 『2Pカラー』。もはやその名は4人にとって忌まわしき印象しかもたらさない。彼らの希望あふるる高校生活を脅かす、仇敵の名である。


「ばあさん。あんたもしかして『2Pカラー』か?」


 紫煙に煙る先で、眼瞼下垂の目が光った。

 然るべき返答はない。あるのは不穏な沈黙だけだ。しかしその薄ら寒い間隔が、別斗に何者であるかを如実に伝えているようだった。

 そこへ意外な人物が前触れなく現れ、全員の視線をかっさらった。


「さすが荒巻別斗くん、馬場上凶子ばばがみきょうこが持つトリッキーさに警戒しているようね」


 田舎道の真ん中で、明らかに邪魔なシボレー・エルカミーノの運転席からヌッと顔を出して、やや調子っぱずれなご挨拶をかます。


「アンタは……ミスターQの」


 覚えている。突刃山はゲロ洞窟内で対決したユーリ・ピロ敷戦の際、ミスターQの傍らでバインダーを持って秘書ぶっていた女性。


「私は桜花おうか。とっくにご存知だと思うけど、『2Pカラー』の事務方よ」


 それでも律儀に路肩へ寄せると、颯爽と運転席から降り立つ。タイトなサファリジャケット身にまとい赤いスカーフを首に巻くスタイルに、どこか星野アスカのような〈自信〉を感じて、別斗はなんとなくミスターQのタイプを感じ取ってしまった。


「いったい、なにしにきたんだ?」


 こう出しゃばったのはあすく。親友をかばっての行為に見えるが、たんに美人と絡みたいだけである。


「なにしに来たとはご挨拶ね、あすくくん。ゲーム対戦を見届けに決まってるじゃない」

「ゲーム対戦だって? ってことは」


 名前を呼ばれた嬉しさで上擦った調子になったことはさておき、驚くのは無理もない。よもやこの駄菓子屋を営む奇妙なババアが裏プロゲーマーだとは、そこにいる誰もが思い及ぶはずもなく。しかし真の驚きはこれではなかった。


「あたしが対戦するんじゃないよ。やい、バーロウ! 戻っておいで」


 ババアのダミ声によって再び召喚される巨体のツインテおっさん。そう、裏のプロゲーマーはこの馬場上把亜郎なのだった。


「なんだよお、ねえちゃん。いまピノ(アイス)食いながら『ピグマリオ』観ようと思ってたところだったんだど」

「そんなのいつでもできるさ。それより、ひさびさにゲーム対戦するよ」

「ゲーム対戦? めんどくさいどー、できればおではやりたくないどー」


 出張った毛むくじゃらの腹を掻きむしり、屁をこくおっさん。この手のキャラ典型的動作に対し、露骨な嫌悪感を示すジャレ子、


「まさか、そのヘンな臭いおじさんがゲーマーなの~?」

「うひょお、ねえちゃん見て見て? このおねえちゃんパイパイが『イバラキングメロン』の5Lサイズくらいあるどー!」

「まって、ちょ~キモい。近寄ってこないでよ~」


 お得意の無自覚な毒舌も、おっさんには返って餌を与えるがごとく。ダンシングフラワーの前で手を叩くかのように、おっさん無尽蔵にはしゃぎまくる。

 これを収めたのは姉である。


「はしゃぐのはゲーム対戦してからにしな、バーロウ。我が儘を云うなら承知しないよ?」

「ねえちゃあん、どうしても対戦しなきゃだめなのかあ? おで実は昨日UFO焼きそばかき混ぜてるとき割り箸が折れて右手の親指痛くしたんだあ。できればやりたくないどー」

「なに云ってんだい、そのくらいで。誰のおかげでマトモな生活できてると思ってんだ。ねえちゃんがいなきゃひとりで役所にも行けんくせに」


 ババアが頭をぶつジェスチャーを見せると、おっさんはやたら大げさなリアクションで拒否感を示した。


「おではゲーム対戦したくないんだどー」

「そんなこと云ってると、ねえちゃんもう飯も洗濯もやってやんないよ? 小汚い寝ションベンついた布団も干してやんないよ? Amazonのクレカ払いもしてやんないよ?」

「なんでだよお、ねえちゃあん。なんでそんなひどいこと云うんだよお」

「ならねえちゃんの云うこと訊きな。あそこにいるクソガキにゲームで勝てば、瀬戸環奈の新作写真集を買ってきてやるよ。それだけじゃない、富士書店でエロビデオも買ってやるよ」

「ほんとかあ、ねえちゃん! ならおでやるど。ゲームで勝ってAmazonで新しいオナホも買ってくれだどー」


 その時間はまるで座禅か蹲踞をやらされているような、ある種の精神修行を疑似体験させられているようだった。言葉ツッコミを排除し、無心にさせる姉弟のやりとりは、もはや道徳の授業よりも尊くさえあった。


「おい荒巻別斗とかいう男、早くおでと勝負しろだどー!」


 この得も云われぬ状況で、意外にも口を開いたのは桜花。


「ゲーマー同士は理由なく惹かれ合うもの。荒巻別斗くん、あなたもゲーマーを標榜するなら覚悟を決めなさい」


 さすがミスターQの秘書である。ものすごい体勢フォームからエグいスライダーを投げ込んでくる。不毛で品を著しく欠く寸劇を、もっともらしい言葉によって軌道修正させてきたのだ。

 まるでクソボールをストライクと判定された顔の別斗、


「わかった、勝負してやるよ。おれが勝ったらガチャガチャに突っ込んだ金全額返せよ」


 やや騙された感がしないではなかったが、こうでも返事しなきゃ状況を進められる気がしない。別斗はもはや悟りに近い諦念でため息混じりにそう応えた。


「やったやったあ、対戦成立だあ。早く準備するどー」


 喜び勇んで駄菓子屋の自宅に消えるおっさんを横目に、あすくが別斗の肩を叩く。


「大丈夫か? なんだか得体の知れない相手だぞ?」


 わかっている。今までの裏のプロゲーマー、その思想信条はぼやけていても、一般社会人らしさは当然のように持っていた。しかし、今回の相手はまるで野獣。深層ウェブでもそうそうお目にかかれない若干特殊な部類の相手だけに、実力は未知数である。


「心配するな。おれはどんな相手でも負けねえよ」


 油断はしない。たとえ相手が少々アレな相手でも、けっして見下したりはしない。わざと自信を覗かせたりビッグマウスで煽ることはあっても、敬意だけは怠らない。それは別斗が幼い頃から父・月斗にたたき込まれたことだった。ゲームというのは誠に公平な競技で、学歴や運動神経、身体的特徴や年齢などあらゆる個人差などまったく関係がない。ゲームの前には誰もが平等であり、対等なのだと。

 もう一度云い聞かす、油断はしない。まして相手が『2Pカラー』ならなおさらだ。

 ソソミ先輩に危害をくわえるやつらは、おれがぶち砕いてやる。


「ふっ、まるでビュティのピンチのときだけ真面目な顔するボーボボみたいだな」


 どんなたとえだよ。別斗内心だけで突っ込み、意味深な苦笑でその場を流した。

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