イケメンから遠く離れて
子供の頃から、私はわがままに育ってきたほうだと思う。駄々をこねるだとか、大きな声で泣いたり喚いたりはしない。けれども、ひどく頑固な子供であった。
これが良い、と思えば何日だって、おなじ店のウインドウに張り付くような有様で、欲しいとは口に出さないが、それを諦めるだとか忘れるだとか、そういう作法を知らないのだった。
その性質は、成長してから別の形であらわれた。恋する相手に対する、継続性にである。
別の段で、私は父のことを書いた。それをお読みになった方はご存知のことだろうが、私は父に似た姿形にどうしようもなく弱い。そして、ひとたび惚れた男にずっと惚れていることになったのである。
短くて三年、長くて十年を超える。
それを一途だと言えば聞こえはいいが、要は諦めが悪いのかもしれない。だから今もこうして、諦めることを知らずに駄文を綴り続けていられるのだ。
そうして、束の間の恋を味わい、私はいつも男と終わりを迎える。
いっとき惚れた男たちがいた。その男たちはみな、「私しかこの人の魅力を理解できないだろう」と思わせるような、一風変わった男たちばかりだ。あるいは、世間一般の美しさからはかけ離れている男。無精髭、乱雑に切られた髪。
絶対に、ほかの女にはこの男の美しさはわからない。それが私の探していたピースに思えて仕方ない。
言い聞かせるように思えるが、実際に後から思い返してみれば皆、それぞれにある種の社会不適合者なのだ。
そして、その欠けた部分こそが私を夢中にさせる要因なのである。欠けたパーツがあり、誰かよりも秀でた部分もある。その危うさが、私の目には美しいものとして映るのだった。
姿形で男を選んでいるのだと信じ込んでいたが、実際にはそうではなかった。同じ姿形の男が二人いたとして、私は、より欠けた方を愛するだろう。
足りないことは、悪ではないし劣でもない。彼の欠けた形と良く似た愛情を、そこに嵌め込んでやることが出来るなら、それはもう欠点ではなかった。
しかしそれは、決して平坦には生きられない道でもある。幸せとは程遠いのだと、ぼんやりと思う。
「あいつ、捕まったよ」
ゴシップのような話題にしか食いつかない学生時代の旧友が、開口一番にそんな事を教えてくる。寝ぼけた頭で、私は遠い昔に愛した男の顔を思い出そうとする。危ういバランスで成り立っているような、謎の多い男だった。さりとて、私には悪い男ではなかった気がするが、もうすでに過去になってしまったその人は、記憶の中で曖昧な笑みを浮かべているだけなのだった。
こんなこと書いてる場合じゃない 十洲海良 @kayiratooshu
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