第54話 永遠の絆


「お疲れ様でした! 短い間でしたがお世話になりました!」

「お疲れさん! 元気で頑張れよ!」

「いつでも遊びに来ていいからね」


 最後のアルバイトが終わり、みんなに挨拶をして回っていた。


(裏方の人はこれで挨拶は終わりかな? 最後はメルさんたちか。まだ、窓口にいるかな?行ってみようか)


 窓口に向かい、座っていたメルさんに話しかけた。


「メルさん、お疲れ様です。今大丈夫ですか?」


「あ! お疲れ様です! 大丈夫ですよ。そういえば、今日が最後でしたね」


「はい、そうです。お世話になりました! 迷惑しかかけてこなかった、メルさんに恩を返せず、辞めてしまうのは心残りになりますが……。何か困ったことがあったら言ってくださいね」


「いやいや! 迷惑だなんて! トワさんは優秀で言ったことをすぐに吸収してくれてとても助かりました。

 恩を返されるような、大層なことはしてませんし。その時は依頼としてお願いしますね」


「ありがとうございます。では、また遊びに来ますね。お元気で」


 僕はメルさんに最後の挨拶をして、みんなが待っている、テーブルへと向かった。


「お待たせしました!」


「お疲れ様ですわ」

「トワ君お疲れ様!」

「「「トワさんお疲れ様です!」」」

 

 僕のアルバイトの終わりにみんなで集まって、ギルドの事を話し合おうと約束をしていたのだ。


 最近、色々あってギルド活動の事を話せてなかったから、今日、明日くらいで決められることは決めておきたい。


 まず最初に決めておきたいのは、ギルドの看板とも言えるギルド名だ。


 それに、戦闘系ギルドにするのか、生産系ギルドにするのかなどなど。

 貿易機能も使ってみたいし。僕としては全部したいところ。


 これからこの世界で生きていくのに、お金は大切だし何よりみんなで色んなことを達成して喜びを分かち合いたい。


 ギルドハウスはゆっくり見て決めれば良いと思うし。


 みんなは、着席し静かに僕を見つめる。そんなに注目されたら恥ずかしいよ。

 僕は軽く咳払いをして、話を切り出した。



「では、これからのギルド活動について話し合いたいと思います。

 まず、決めないといけないのは、一番大事な、ギルド名です! ギルド名はギルドの看板と言っても過言でもないほど、大切なものです。

 みんなで考えていきましょう。何か案がありますか?」



 僕の問いにみんなは黙り込んだ。ただ一人を除いては。



「はい! 『トワ君とその仲間たち』がいいと思います!」


「却下です」


 僕は、ヒロさんの提案を言い捨てた。もっとちゃんとした案を下さい。僕は続ける。


「他に何かありませんか? まあ、ギルド名って言っても分からないと思うので、一つ僕が例を言いますね。『憩いの場』、『希望の誓い』とか『なんとかアルカディア』とか、まあ、本当色々自由です。

 他にも、なんとか王国とかなんとかの家でもいいし、そんな難しく考えないでいいですよ」


 そう言うと、難しそうな顔をしていた人たちの表情が少し和らいだ。

 少し待っていると、みんながどんどん案を出してくれた。

 

 色んな案があって迷う。そして、再び沈黙が始まった時、ヒロさんが独り言をボソッと呟いた。


「隠れ家……。永遠の……。不滅の……。んーー。永遠の絆。

 あ、『永遠の絆』ってのはどう!? ギルドのみんなの絆が永遠に続けばいいなって!」


 永遠の絆か。そのヒロさんの思いはとても大切だと思う。それに、難しくもなくシンプルで分かりやすくていいと僕は感じた。

 

「永遠の絆……。いいですね!」

「とても素晴らしいギルド名だと思います」

「素敵です。わたくしは、異論はございませんわ」


 と、ジークさんを始め、グーファーさん、ルナさんも称賛している。

 僕は話を続け、モジモジしているリーフィスさんに話を振った。


「僕もいいと思います。リーフィスさんはどうですか?」


「私も素敵だと思います。しかし、入ったばかりの私がそんな、偉そうな事を言っていいのかどうか……」


 やはり、そんな事を思っていたか。ギルドを作成した時も同じような事を言っていたな。


 もう僕たちのギルドの一員なんだから、自信を持ってくれていいのに。


「入ったばかりだとか、前からいるとか、そういうのは、なしにしましょ。

 リーフィスさんは、同じギルドの仲間なんですから、自信を持ってください」


「分かりました。ありがとうございます。これからは気をつけますね」


 これで、リーフィスさんも、みんなと同じように接してくれると嬉しいな。


「では、僕たちのギルド名は、『永遠の絆』です! みんなでこのギルドを盛り上げていきましょう! よろしくお願いします」


「「「おぉーー!!!」」」


「じゃあ次のお題は……。んーーっとじゃあ、ギルドのスタイルについて話し合いましょうか。

 ギルドには戦闘系ギルドや、生産系ギルドなどのスタイルがあるんですよ。

 戦闘系って言っても、『イベントストーリークエスト』などの、クエストの攻略をメインにしたギルドや『ギルド対抗戦』をメインに置いているギルドなどもありますよ」


 ジークさんとグーファーさんは戦闘系ギルドに反応し、リーフィスさんとルナさんは生産系のギルドに反応を示した。

 ジークさんは不思議そうに聞いてきた。


「戦闘系ギルドは分かるけど、生産系ってなんだい? 生産してどうするのさ」


 

「いい質問ですね。生産系ギルドは、『オークション機能』を使った貿易や、機能を使わずとも、ギルド同士で交易したりします。

 さらには、自分たちの土地を持って、野菜を育てたり、漁をして魚を売り捌くのもありですし。物を売買してお金を稼ぐなどをしますね。

 自分たちの店を持つ事もできますよ。他には武器や防具、などの装備品。アクセサリーの生成して販売とかもできます」


 その言葉に、ジークさんとルナさん、リーフィスさんの三人は首を傾げる。そして、ルナさんが口を開く。


「お金にお困りでしたら、わたくしたちの国から支援をすればよろしいのではないのでしょうか?」


 そうだった、忘れていた。この人たちみんな、王子様とお姫様だった。


 お金には困らないのか。でも、違う! 自分たちで稼ぐからこそのロマンなのだ!


「確かに、そうすればお金には困らないと思います。

 でも、みんなで色んな案を出し合って、試行錯誤を繰り返し、必要な素材を取りに行ったり、物を作成して、自分たちで稼ぐ。それがギルド活動であり、楽しみの一つなんです!」


 つい、熱くなってしまった。ヒロさんは、うんうん、と頷いてくれている。


 他の人は、はぁ。っという顔をしている。


「まあ、だいたい理解はできた。まあそれも面白そうだな。今、色んな経験をしていれば、将来役に立つかもしれんしな」


 と、ジークさんが頷く。それから僕たちはギルドについて話し合った。


 その結果、僕の要望が通り、やれる事は全てやることになった。


 ギルド対抗戦・本戦で優勝を目指したり、イベントに参加して上位を目指したり、色んな物を生産して販売したり。


 目立つのは好きではないけど、僕は負けず嫌いだから、やるからには勝ちたい。これからが楽しみだ。


 ギルドハウスは明日また集まって決める事になった。解散しようとした時、背後からザーハックさんに声をかけられた。


「坊主。ちょっといいか」

「ザーハックさん。大丈夫ですよ」

 

 ザーハックさんは、険しい顔をしてこちらを睨みつけて言った。


「黙って俺と決闘しろ!」


「えぇぇ!?!?」

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