第33話 新たな刺客ですか

「兄上、ルイ殿の行方はわかった?」

「いや、湖や近辺の川や山を捜索させたが見つからない。しかも移動した形跡もないのだ。もちろん遺体もない。早馬でアルベルスの業者宅に連絡させたが戻ってきてはいないようだ。まぁ当然か…一番近くの街で、ソレイドホークにも使いをやったが特になんの騒動にもなっていなかった。この数日で若い女性のひとりの旅人がいたとの連絡も入っていない。まだ近くにはいるんだと思うのだが…かの国を王子を捕らえたと思っていないだろうから、もうこちらには戻って来ぬかもしれないな」

「そうだよね…なんか短い付き合いだったけど寂しいな…もっと話をしたかったのに…」

「そうだな…」



 ルイがソレイドホークにやってきて数日後、サウーザの王子たちがかの国の王子を尋問を始め出した頃、ルイはまだ移動せずにソレイドホークの街にいた。

 ルイはこの街がすこぶる気に入ったようだ。山や川が近くにあり、田舎でも都会でもない感じがよかった。王都やアルベルスのような大都会もいいが、ソレイドホークは都会でありながら自然も多く残っている街で人々も穏やかで時間がゆっくりと進んでいる気がするのだ。ルイはあれからしばらくあの赤い宿で寝泊まりをしていた。


 ちなみにルイは明るめのブラウン系の髪に緑の瞳をしている。街に入る少し前に変えていた。王都の王子たちが捜しにくることはないと思うが念のため風貌を変えた。今の所もう王都に戻るつもりはない。


 週一の王都新聞によると、水の化け物は水龍といって神獣である事がわかりこれ以上の被害はないとした。たまたま現れたようだとしている。神の使いが訪れた素晴らしい都だと陛下は語るとなっている。ルイのことやかの国の事は触れられてはいない。公にはしなかったようだ。


 カミノアは近くに大きな湖があるのでそこにいる。いつも水滴で寄り添ってくれていたが、今は黒猫の仔猫に憑依をしてルイのそばで暮らしている。赤い宿の近くで黒猫の仔猫が住み着いていた。飼おうとした矢先死んでしまったのだ。悲しんでいたルイにカミノアはルイに笑ってほしくて仔猫に憑依したのだ。


 ルイは付与の仕事は休んで、今は一日置きに往診するセロジネと一緒に行動をしていた。セロジネはルイを助けてくれたお医者様である。ある日ルイが黒猫と街をぶらぶらと散策していたら「暇なら手伝え!」と言われたのがきっかけだ。それから助手をしている。沢山の人たちとふれあい知り合いになれていい職場だ。


 セロジネの診察所は自宅兼になっており、ルイ以外に助手はいなかった。診察の小さな部屋だけはキレイにしていたが、他の部屋はゴミや薬草などのクズが充満して匂いもひどかった。以前の職は掃除婦をしていたとセロジネには言ってあるので、最初に助手としての仕事は得意の掃除からだ。すべて物を外に出し洗い流さないと匂いも取れないほどひどい状態であった。


 しかし、セロジネは本当に腕はいいようでケガ人や病人が引っ切り無しにやって来ていた。ルイの立場は助手というより、お手伝いさんのようなものである。


「一日、一万くれてやるからしっかり働けよ!ガガガ」

 セロジネは口は悪いがケチではなさそうだ。掃除が終わりキレイに整理整頓された部屋になるとセロジネから薬草に付いて教えられた。春になれば山に薬草を取りに行って乾燥させるのである。薬草を入れる大きな棚がある。そこには数多くの乾燥させた薬草が眠っていた。しかしセロジネの部屋には乾燥させた大量の薬草が置きっぱなしになっている。それを仕分けして収納してほしいようだ。


 今日はセロジネに言われて、溜まりに溜まった大量の洗濯物を洗いに川へと来ていた。ルイは大きな籠に洗濯物を入れ背負って洗濯場まで来ていた。川には洗濯し易いように板なので出来た足場が組まれていた。魔法とカミノアに手伝って貰いながら洗濯をしていた。


『今の時期に川で洗濯なんて、私なら水が冷たくて死んじゃうわ』

 ルイがたくさんの洗濯物に悪戦苦闘している所にそんな声が聞こえた。声がした方に顔を向けるとそこには、薄い青色から濃い青色のグラデーションがキレイなオウムが洗濯場の足場にとまっていた。トサカは黄色でシッポには赤が一筋入っている。


「モナルダ?モナルダがどうしてこんな所にいるの?」


 そこにはルイの知っているオウムがいた。

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