第32話 散策中です

「お薬は自分で作ってるんですか?」

 ルイがガツガツと朝食を食べているセロジネに質問をした。セロジネはギロリとルイを見た。

「そりゃそうだろう。誰が作るんだ?」

「さぁ、専属の人がいるのかと思って…」

「医者が薬を作れなくてどーするよぉ。嬢ちゃんは本当に嬢ちゃんなんだな」

 どういう意味だ。

「いつも誰かにやってもらってるんだろう。そういうこった。ガガガ」

 変な笑い声…ま、確かにいつも誰かにやって貰っていたな。

「ポーションなんてのもあるが、あんなバカ高ぇもんは貧乏人にゃ買えんからな。貧乏人は手作りの安い薬に頼るしかなのさ」

「ポーションっていくらなんですか?」

「そんなんも知らねーのかい。ポーションは一本三十万ペントくらいするだろうよ」

「え、そんなに?高い…」

「だろ!魔法学院を卒業したようなエリートしか作れないからな。数にも限りある。お貴族様にしか渡らないのさ」

 ポーションってそんなにするんだ。かの国で熱を出した時なんかは王子たちから腐るほど差し入れされていたけど…そんなにする物だったとは…一本飲んだら治っていたから残りは本当に腐らせていたな…何ということをしていたのだろう。本当に私はお嬢さんなんだな…

 まぁ王子たちは私に早く復帰してもらい便利グッズを作らせたかったからなんだろうけど。


「そういえばさぁ、嬢ちゃんは寝込んでいたから知らないだろうけど、今王都で大変な事が起こっているらしいよぉ。なんでも水の化け物が城を襲ったそうでさぁ。王都では大騒ぎだってさ!昨日王都から逃げ帰って来た子がいてねぇ。嘘いいなよって言ったんだけどさぁ、昨日着いたの王都新聞でその事が載ってたんだよぉ。こわいねぇ」

 宿屋の女将が教えてくれた。

「え…その新聞見せてもらえる?」

「ああ、いいよ。これだよ」

 ルイは新聞を渡され見てみると、手書きの絵が付いていて詳しく詳細が載っていた。近くにいた八百屋の女将や外注の者たちが逃げ帰って大げさに話をしたのだろうか。手書きの絵には城が壊滅している。

『そんなに派手に壊してないからね』

 水滴になっているカミノアが耳元で言う。

「ふふ、そうぉ?」

 遠くから城を見ただけだが随分と大騒ぎをしていた。派手に暴れたらしい…

「じゃあ、俺は行くから、またなんかあったら言ってくれ。嬢ちゃん支払いよろしくな」

 強面の医者はキレイに朝食を食べて出て行った。王都からこのソレイドホークまで馬車で五日ほど掛かる。王都で新聞が刷られたとしてここまで配達されたのが昨日なら、この新聞がこの街での最新の情報だろう。ルイは七日間寝込んでいたのだから、ルイが関係しているとは誰も思うまい。王都新聞は週一に届けられるらしい。


 ルイは朝食を終え、宿をひとまず出て街を散策することにした。山と川に挟まれた街で坂道が多い。まだ真冬という時期ではなかったがすでに雪が積もっていて、ものすごく寒かった。しかし王都とは違い建物は木材で造られていてカラフルで可愛くおしゃれである。

 

 この街にしばらく移住してもいいかもしれない。でもすぐにかの国からの追手が来るだろうか…私を感知できる距離ってどのくらいだろう。

『ここまで離れていたら分からないと思うよ。僕もこの距離からだと声は聞こえないし』

「そうなの?」

『それに僕がいるから大丈夫だよ。かの国が近づいてきたらすぐに分かるから』

「本当?じゃあ慌てることないわね。しばらくゆっくりしよう。なんだかずっと緊張していたし…」

『うん、疲労が溜まって熱が引かないってあの医者が言ってたよ』

「そうなんだ。やっぱり腕はいいのね」


 ゆっくりと散歩をしながら散策し、お店に入り昼食を食べたり、冬用の物を買い揃えたりして楽しんだ。しかし、病み上がりなのを忘れてお昼過ぎには疲れてしまった。もうあの宿には引き返せなかった。

 ルイは仕方ないのであの宿には戻らず、目に付いた近くの宿に泊まる事にした。キレイな外装で赤い家が目に留まった。そこは素泊まり専門のようで部屋には小さなキッチンが付いていた。もう元気だし自炊をしようと思いそこを借りる事にした。一泊四千五百ペントだ。少々高いがキレイなのでよしとする。


 朝食用にパンと卵とベーコンに塩だけ買って部屋に戻った。調理器具は大体揃っている。しばらくここを拠点にしようと決めたルイだった。


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