君がゾンビになっても、愛してます以上の言葉を贈りたい。 その2
笑いが絶えない幸せ一杯な大晦日を過ごし、ゆく年くる年が始まるタイミングで近所の神社へ挨拶代わりのジャブ詣。
全身ぶっかぶか。まん丸くなった完全装備の奏が『厄除けになるんだよ』と探してくれた神社まで、深夜のお散歩。
近年は独りで過ごしていたし、奏は職場でバタバタし通し。除夜の鐘は聞こえないけれど、一緒にいると、改めて幸せだなぁと感じる・・・
『ジングルベール、ジングルベール、鈴がぁ鳴るー。今日もぉ行くぞとサンタが言ぅー。ジングルベール、ジングルベール、鈴がぁ鳴るー。働かせるなら金が欲しー』
人気のない路地に、数日遅れのクリスマスソングと、僕の笑い声が響き渡っていた。
神社が近付くにつれて、参拝に向かっているのであろう人たちが、ちらほら視界に入ってくる。
「多分もうすぐだね。付いて行こっか」
『うん。きっと同じ目的だよね』
中には、近所の居酒屋さんを運営している女将さんの姿まであった。間違いない、付いて行こう。
お焚き上げの匂いがしてくる。
大通りを逸れて、木の燃える匂いに誘われるがまま少し歩く。すると、小規模ではあるが、立派な神社が待ち構えてくれていた。
『ひとさん』
「ん?」
『新年おめでとうございます』
「おめでとうございます。回った?」
『うん、いま携帯見たら回ってた』
それくらい時間を気にすることもなく、ぺちゃくちゃ話ながら楽しくここまで歩いてきた。
『さすがに出店ないね』
「うん、さすがにね」
『でも、あの焚き火みたいなのいいね』
「神聖な感じするよね。煙浴びに行こ」
『あ、私も』
「煙臭くなるよ?」
『いいの。こんなのあるんだねぇ』
「うん、うちの地元も
『それ見てみたいなぁ』
寒さでやや硬直していた奏の表情が、炎の灯りと温もりで、柔らかくなった。
「ここ、当たりだねぇ」
『そうでしょ」
「人も多くなくて丁度いい」
『崇めだでまづりだま』
「え!? っははは・・・」
『アッハハハハ』
「っはははは・・・」
煙臭くなった帰宅後も、夜中の3時過ぎくらいまで、いつになく冴え渡っていた奏。元旦の起床時刻は、なんと朝の7時半。雨でも降らなけれいいが・・・
『はい。正月と言えば雑煮です』
食卓に並べられた赤飯に魚の甘辛煮。紅白かまぼこ、栗きんとん、焼き豚。ここまでは昨日の買い出しで購入した品。そして奏お手製の出汁巻き玉子とお雑煮。
「本当にお餅しか入ってないんですね」
『なんか文句あるんですか』
「いえ・・・」
『2発目おみまいするぞ!』
お雑煮。どこの御家庭でも皆さん召し上がるんじゃないだろうか。お袋の味でもある正月料理。
鶏肉をベースにした出汁に、三つ葉となると。そこに焼いたお餅を浸らせる。僕が生まれてからずっと食べてきたお雑煮。
大月家はと言うと、と言うより大月奏はと言うと、シンプルイズベストな出汁に電子レンジで温めたお餅が浮いているだけだった。
『お雑煮の方向性の違いで、新年早々解散だな』
フンーッと鼻息を立て、御立腹とばかりに口に出した奏だったが、その表情は、なかなか面白いことを言ったんじゃないかと、楽しそうに笑っていた。
僕も思わず笑っちゃったし、手応えがあったようだ。
「そう言えば君。初夢見てたぽいな」
『うん変な夢だった』
「タイトル・・・タイトルマッチ・・・・・・って、はっきり言ってたよ」
『アッハハハ』
「水曜どうでしょう見過ぎなんだって。レディーーーゴーゥに近いもんがあるだろ」
『そんな夢、見てないよ』
「いや、あまりにもハッキリ過ぎて笑いが止まらんかったよ」
『ひとさんだってこの前「よろしくお願いします!」ってハッキリ言ってた』
「あれは自分でも驚いて起きた!」
『そうだよ、私も寝つけた時やったのに、びっくりして起きたんだから』
「二人して笑ってたけどね、あれは本当ごめん」
『サマーウォーズみたいだったもんね』
「で、どんな初夢だったの?」
『えっとねぇ。遊園地にあるバイキングみたいな乗り物を、ガメラがグルングルン回しててね。それから、ダンスを踊りながら佐藤二朗が出てきて、夜の学校に侵入するんだよ。それもねミッションインポッシブルに出てきそうな、大きなトンネルの先にある超速で回ってる換気扇みたいなところから・・・・・・』
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