6
長い時間掛けて風呂から上がると、関崎がドアの前に立っていた。
「良かった……しばらく出てこなかったら、確認しようかと思っていました」
彼は安堵の表情を浮かべて言った。
「ああ……いつもなんだ」
私は素っ気なく言って、ベッドに向かった。力なく頭を拭いていると、彼が慌てた様子で私の元に来た。
「私がやりますから」
彼が私からタオルを奪うと、私の髪を荒っぽく拭き始める。
「君は結構、がさつなんだな」
頭を横に揺さぶられながら私は言った。
「強かったですか? すみません」
彼が焦ったような声を上げると、今度は先ほどより丁寧になった。
「こういったことに、慣れてないものでして……」
彼は恥じ入るように小声で告げる。
髪を乾かし終えると、彼は私の前に跪いた。それから救急箱から包帯を取り出して、私を驚かせた。
「君がするのか?」
私の問いに、「駄目でしょうか」と彼の目に不安の色が浮かぶ。
「お気に召さないようでしたら、医者を呼びますが」
「……私は別に構わない」
私は手を差し出した。やや水分を含んだ包帯は、蒸していて気持ち悪い。
彼が私の包帯を解いていく。私は彼の一挙手一投足を見守った。痛々しいまでの手を見てもなお、彼は根をあげずにいられるだろうか。好奇心と恐れが半分ずつ私の中にいた。
今まで私の世話をした者は、包帯を巻くことを嫌がる者が大半だった。私のこの痛々しいまでに腐敗した手を見るに堪えないと思っていることは、口に出さずしても私には理解できることであった。
包帯が全て取り去られると、私の醜い手が白日の元に晒される。
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