第9話―前悪の呪い09―

傭兵エスティマは侮っていた。

勢いよく指南をお願いして厳しい特訓にすぐ弱音を吐くだろうと当て推量していたが

外れる。

シザーリオは数千の素振りこなすと草の上に尻もちをついて荒らげた息を整えていた。


「まさか、あんな無茶な回数をやり遂げたというのかッ!?」


「はぁ、はぁ…あっ、はい!鍛えるのは得意なのもでして」


「ほーん、そうか。ほれ昼餉ひるげにしようぜ。リンゴだ」


リンゴが今にも溢れんばかり積み入れた紙袋の中から一個つかみ出して投げる。

キャッチしやすいよう絶妙な速度と角度。

なので合図もなく急に投げられても難なくと受け取れることを出来た。


「ありがとう。これを食べ終えたら実戦さながら訓練をお願いします。もちろんイメージ訓練じゃなく剣戟けんげきで」


「実戦的な訓練か…それは構わねぇが。

まずはそのギルドで付けた腕輪をはずさんと勝負が出来ねぇなぁ」


「…あの気になったんですが腕輪が身につけていると何かあるのですか?わざわいとか」


以前にギルド職員に十分な説明を受けずにいた彼はギルドで装備が必須とされる。ソレがどうも危険性が内包されて気がしてならなかったのだ。


わざわいとはいかねぇが…

制限をかけられるぐらいだ。これを身につけると人間には障害など起こすことを阻害されるようになっている。

荒くれのギルド同士のケンカや暴漢などが好き勝手しないよう対策」


なるほどとシザーリオは腕輪を必須なのは、それかと納得する。好き勝手とされれば住民に被害を受けてしまい施設の存在意義や立場が立たない。当然の処置であると理解はしているが説明をそこまでしないギルドの職員に

不満と不安が募る。

そして人間に障害させないよう制限、先ほど述べた戦えないことの呟きをシザーリオは考慮して考えた仮説に息を呑む。


「まさか。つまり、この腕輪を付けている限りは剣を振るった実戦的な訓練は――」


「鋭いな、その勘は当たりだ。

取り外すさない限りオレに剣を振るえない。

そういう規則だ」


見放すような冷たい口調で傭兵は言った。

剣を交えての訓練を出来ないことでシザーリオは肩を落とすのであった。

――レア・レディック周辺にある森深く。

それからも基礎的な鍛錬は欠かさずに行い続けた。まずたゆまずに、嫌気を覚えてしまうほどに剣術を磨いていく。

しかしシザーリオが磨くのは教えられたもの。それが教本的な剣術ならともかく、剣を極める目的ではなく勝つ為だけの剣。

砂を噛むような鍛錬にも励んできたが。


「やはり、愚直に鍛えても限界を感じてしまう。想像での攻撃や気配よりも実際に触れないと…ならない」


そして、ここは森の中。茂みの中から魔物が出没される地域。そこで訓練を選んだのは魔物を戦うことが今回の目的であった。

師である傭兵には何も伝えずに。

ドスン、ドスン!轟音が遠くから聞こえて音のする方角に構える。地面が少しずつと揺れが強くなるのと同時に高揚感が高まる。


「俺は生粋の騎士なのかもしれないなぁ…」


好戦的な笑み。

それを誰かが見たら獣のような形相で狂戦士のそれであると印象であろう。


「………」


ゆるやかな動作で現れた。土色をした巨体。

シザーリオの知識にある魔物の名はアースゴーレム。高さは2メートルあり鈍い赤いの瞳を点滅をしている。


「はは、アースゴーレムか!久々に手応えのある敵が出てきたなぁ!」

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