ボクに、さようなら
犬の散歩に行ってきなよ
そんなことを言われたら
ボクが行かなきゃいけなくなる
寒いのに、狡いなって思った
白い息を吐きながら
秋田犬、黒柴、三歳 は
歩いている
歩幅は軽快で
速度はボクに合わせてくれる
きっと小さい頃の記憶だ
お互いに隣同士になるよう歩いた
そんな記憶
理由なんて「舐められないように」
だった。
そんなことをコイツは覚えている
町内をぐるりと一周する
角におしっこしたら水を上書きして
もちろん、トイレはビニール袋
あんまり家ではしないから
散歩で解消するものってか
えらいな、コイツ
人間よりも賢いよ
家にいるより頭が冴える
そりゃ寒さは頭から入って身体をめぐる
かじかむ
コイツにはないのかな
小雨なら散歩行くし、まあ、そうか、仕組みが違うもんな
勉強している時、コイツを見ていると
何も考えなくていいなあ、て思う
そんなことないのにな
甘えたい時は近寄ってくるし
食べたい時は足でちょっかいかけてくる
手を伸ばせば頭を乗せるし
カリカリの音を聞けばすっとんでくる
寒かったら陽の当たる場所か炬燵だし
熱かったら冷たいフローリングで伸びてるし
「さむくねえの」
歩くコイツに言ってみたが
”なんか言った?”みたいな顔でボクを見上げた
そうだよな、単純な思考回路っていうか
そのまま生きているんだよな
ボクも好きに生きたいよ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます