(おまけSS)真美side:穏やかでないレイコさん
昼休み。
うちらはいつも通りレイコの席を中心に集まっていたんだけど。
「はぁ……」
最近いつもになりかけていたいっくんが不在という状況に、いっくんの席に代わりに座った麗子は、頬杖をつきそりゃもう寂しい切ないと顔にかいてあるように、心ここにあらずといった感じでため息を漏らした。
「はぁ……」
何度も。あぁ、これはリアルガチで重症っぽい。
ここまで誰かにご熱心なレイコを見るのは間違いなくこれが初めて。
ほんと、いっくんは大変なものを盗んでくれたものだよ。
ちなみに当方人と言えば、現在ちょっとしたお手伝いをお願いされていて教室にはいなかった。
いっくんを連れ出した相手は、あの今日一番桜星高校のみんなを驚愕と絶望の渦に巻き込んだといっても過言ではなかろう女性徒、柏木こはるんで。
「いやーにしても、今日の委員長にはマジでびっくりさせられたよなぁ。あの真面目な委員長がいきなり髪染めて真っ黒になってギャルだぜギャル。まるで悪いチャラ男にでも引っかかったみたいな感じの変身ぶりでさ。ほんと、男子達の絶望ぶりなアホ面といったら、ちょー傑作だったわ」
下手なお笑い番組より爆笑ものだったと、シホはくくっと思いだし笑いを浮かべた。
「ほんまになぁ。それに実際のところは、柏木さんがお熱なのはチャラ男とは正反対的な存在の山代って話やん。柏木さんは、一体誰に対抗意識燃やしてるんやろなぁ」
「……なに?」
サユリの茶化すようなにやけた視線に、レイコがふくれ面で反応する。
なんか今日のサユリってば、レイコとは逆に妙に機嫌よさげなんだよねぇ。昨日何かいいことでもあったのかな?
「実際、こはるんがああなったのって、こはるんが痴漢に遭ってたところを偶然乗り合わせたいっくんが助けてくれたのがきっかけなのは事実っぽいしねぇ。こはるんにとっていっくんは恐怖から救ってくれたヒーローみたいな存在だし。おまけにこはるんから聞いた話、何か悩みごとの相談にものってもらったって話だから、そりゃ惚れちゃうのも無理ないと思う」
「ほんと、困るよねぇ」
うちが昼休みまでに仕入れた情報を並べると、何故かレイコは呆れたとばかりに肩をすくめて、
「ほら、山代ってさ。基本的に誰にでも優しいところあるでしょ。だから自分だけが特別とか、自分に気があるとか勘違いしちゃう困ったさんが出てきちゃうのは、まーしかたないっていうか別にいいんだけどさ。でも、よりによって委員長って。あの人はどっちかって言うと勘違いさせるプロでしょ。それが勘違いする側に回っちゃうとかさ。あれでしょ、策士策におぼれちゃう的な。ほんと、しっかりして欲しいよねー」
「…………」
おいおいおい、何言ってんだこの人?
はぁとまた深いため息を吐くレイコに、うちとシホとサユリがぽかんと目を丸くする。
けれどレイコはそんなあたしらの視線など気にすることなく、
「たまに恋すると自分のことが全然見えなくなる人がいるじゃん。委員長ってば、あんな大胆なイメチェンして、何か山代の彼女になれる気満々で舞い上がってるみたいだけどさ-。そりゃ気合いは買うよ。けど、委員長自身が今まで告白されてそうだったように、山代本人には全くその気がないのは気付いて欲しいよねー」
「あの、レイコ。素朴な疑問なんだけど、何で山代にその気はないって断言出来るの?」
サユリが困惑した顔で尋ねると、レイコは頬を紅くし少し照れくさそうに指先をもじもじといじり始めて。
「……実はさ、あたしちょっと前に山代から遠回しにアピられたつーか、付き合うならあたしがいい的な感じのこと言われたんだよね……。まぁ、あたし自身はそんなこと全然考えたことすらなかったけど。丁度今フリーだし、アリかナシで言えばアリよりのアリな気がしなくてもない的な……にゅふふっ」
桃色のオーラを纏って自分の世界に入ったレイコを余所に、うちら三人は顔を合わせて真偽のほどを協議する。
「シホ、マミ、今のレイコの話どう思う?」
「……ぶっちゃけレイコの誤解か早とちりの可能性が濃厚。つーか、あの根っからの陰キャ体質の山代がレイコを口説くとか想像できない」
「あーそれは同意。いっくんってば引くレベルに自己評価低いから、そもそもレイコが自分に好意を持ってることすら気付いてないと思う」
「ふむふむ。ってことはうちのところのレイコさんこそ、山代の彼女になれる気満々で舞い上がってる困ったさんであると」
お花畑状態のレイコを一瞥したサユリが顎に手を当てなるほどと締めくくる。
まぁ、こっちは浮気を危惧する奥さんみたいな感じでナーバスになってる分、ワンランク上で重症っぽいけど。
実際、いっくんが誰と何しようが浮気でもなんでもないんだしね。
「問題は、山代が断るのが超苦手なタイプってことだよね。なるべく傷つけないようにって変に言葉を濁したら、逆に委員長ってばわんちゃんあるかもと勘違いして無駄に迫ってきそうだし。かといってあたしが間に入ってあげるのもさ、また余計にこじれそうだもんねぇ。あのいかにもあたしを意識したようなイメチェン。どう考えてもあたしから山代をとるって意志表示も入ってるだろうし。はぁ……」
こ、この人、ついに自分が選ばれる前提で話しをし始めたよ!?
「ほんと、恋をすると自分のことが見えなくなるのは困ったもんだよねー」
「「「うん、心の底から同意するよ」」」」
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