第19話 マルゴレッタちゃん!奮闘前ッ!!後編
アルディオスの森に帰還したマルゴレッタ一行。
マルゴレッタ達は、森の中でも比較的大きく拓けた泉の広場と呼ばれる場所を拠点とし、侵入者を救うべく行動を開始していた。
「『わたち、ジャレッド叔父ちゃんや森の皆んなと、一杯パパ達のお邪魔虫するでち!!』……ジャレッド叔父ちゃん、これでパパに伝わったでちかね?」
手に持った手の平サイズの薄く黒い板を興味深けに眺めるマルゴレッタ。
「おう、それで伝わってる筈だぜ。その、念話器は登録した相手に自分の音声を念話として送る事が出来る魔導具だからな」
「あば〜。これ、ジャレッド叔父ちゃんが作ったんでちよね?……凄いでち」
「そうか?登録出来る人数も一人だけだし、伝えたい事を一方的にしか送れねぇ。俺的には改良の余地有りの代物なんだけどな。そんな事より、ローゼンにあんな挑発的なメッセージを送って良かったのか?」
そんな事を言いながら、ジャレッドは地面に金属製の棒を等間隔に何本も突き立てていく。
「ふっふっふ。わたちの挑発的な発言で、怒り狂ったパパ達はきっとわたちを血眼になって探す筈でち!わたちにかまけてる間に、森の皆んなで侵入者さん達を逃す作戦でち!!完璧なんでちよ〜〜」
ふんすとドヤ顔をかまし、根拠の無い自信に溢れる幼女に、ジャレッドは苦笑いを浮かべ肩をすくめる。
「まぁ、ローゼン達がお前を血眼になって探すって事は間違いないだろうが、お前にかまけて奴等の対応が出来ないって事はねぇな」
「あばば?ど、どういうことでちか?」
「この森には、
「……わたち達以外の存在ーーあばっ!?」
「おっ!オリヴィエの奴、早速解放しやがったな」
森の異変に気付いたマルゴレッタは小さく身震いをしてしまう。
毎日のように駆け回り遊び場にするアルディオスの森で、今まで感じたことの無い恐怖を感じたからだ。
目に映る森の景色は変わらない。
だが、確実に森は別のナニカに変化を遂げようとしていた。
「ジャレッド叔父ちゃん、わたち、森をこんなに怖いと思った事はないでちよ。……これってママの仕業でちか?」
「そうだ、お前のおっかねぇ母ちゃんの力が、この森に変化を与えているのさ。がははははっ!心配すんな。俺が傍にいる限りお前に害が及ぶ事はねぇからよ!」
不敵に笑うジャレッドを他所に、初めて森に恐怖を抱いたマルゴレッタは、辺りをキョロキョロと落ち着きなく見渡す。
圧倒的な敵意と殺意の気配。
幼女の細く白い首からゴクリと息を呑む微かな音が鳴る。
「マルゴレッタ様、何をそんなにビクついておられるのですかな?」
「あびゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!?」
ぬるりと、背後からマルゴレッタの様子を覗き込む老人。
間近で不気味な笑顔を見せる老人に、幼女は絶叫を上げ白眼を剥きながら卒倒する。
胸に手を当てながらピクピクと痙攣するマルゴレッタの姿に、王冠を被った二匹の魔獣が慌てふためきながら駆け寄った。
「お、お嬢!?し、しっかりしてくだせぇ!!」
「デカブツ!姫に何をしたのっ!?」
「いや……。我輩、声をかけただけだが……」
人の形をとった執事姿のナイトカインは、後ずさりしながら困惑の表情を浮かべる。
「ビビって気を失っただけだ。気にすんな。それよりナイトカイン、話は付けてきたのか?」
「は、はぁ……。キング殿、クイーン殿が取り成してくれたお陰で、各種族の長とスームズに話は付きましたぞ」
「よし。俺の方も片道用の"
先ほどジャレッドが突き立て、円形状に配置された二十四本の金属製の棒が、文字を浮かび上がらせ淡い光を放つ。
キングはマルゴレッタを気遣いながら、地面から魔力を放つ
「ジャレッドの兄貴。あっしら魔獣達は攫った侵入者共を、あの光る輪っかに放り込んだらいいんで?」
「おう。あの光る輪っかは
「分かりやした。ジャレッドの兄貴、お嬢の事を頼みやすよ」
「まかしとけ!お前等も、無茶な行動だけはするなよ」
渋い顔でぺこりと頭を下げるキングに、ジャレッドのゴツい手が彼の頭を気遣うように撫で付ける。
次いで、ジャレッドは伸びたマルゴレッタを抱きかかえ、彼女を軽く揺さぶった。
「ほれマルゴレッタ、いつまで伸びてるんだ。
「ーーあばっ!!?そ、そんな事はさせないでち!マルゴレッタ救援隊!出動でちよ!!」
ジャレッドの言葉に覚醒した幼女は、クリクリとした青い瞳を見開かせる。
「ジャレッド副隊長!速やかに任務を遂行するでちよ!!命達が我々の救いを求めているでち!!」
使命に燃える幼女は、形の良い眉を吊り上げキリリッ!とした表情を作った。
抱きかかえたマルゴレッタの威勢に、ジャレッドは遠い目をしながら一人ごちる。
「俺……選択を間違っちまったかなぁ。マルゴレッタに振り回される未来がありありと視えるぜ……」
「ジャレッド殿、心中察しますぞ……」
「兄貴ぇ……」
「キリリとした姫も愛らしいわぁ……」
深い溜息を吐く取り巻きをよそに、マルゴレッタは空を指差し吠える。
「いざ、
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