第27話 運命の夜

 年末年始はスポーツイベントが盛りだくさんだ。大晦日は、総合格闘技にボクシング。年が明ければサッカーにラグビーに駅伝。でも今年は、持ちこしたサクセスバイオの株が気になってぜんぜん楽しめなかった。


 またテロが起きたらどうしよう。アメリカ株がさらに下がったらどうしよう。サクセスバイオが倒産したらどうしよう……。

 頭のなかは、そんな不安でいっぱいだった。


 1月3日。俺はいつもの年よりも早めに、実家から東京に戻った。明日の取引に備えるためだ。スマホよりもノートパソコンの方が通信も安定してるし、同時にたくさんの情報をチェックできる。


 今夜のアメリカ株はどうなるんだろうか……。


 ちなみにダウ平均株価は、12月31日は350ドル高、1月1日は休場、1月2日は200ドル安でまだ反発しているとはいえない。

 日本株の明日の動きは、今夜のアメリカ株の動向にかかっていた。


 午後11時30分。アメリカ株の取引がスタートした。ダウ平均株価は前日比100ドル安。テロへの警戒感から買いはあまり入っていないようだ。

 くそっ、このままズルズル下がったらかなりマズいな……。


 俺が市場を監視し続けたところで、世界の行く末は変わらない。アメリカ株が暴騰しようが暴落しようが、明日の朝までサクセスバイオを売ることはできない。

 そんなことわかってる。今のオレにできることなんてない。でも気になってしまう。仮にベッドで目を閉じたとしても、今夜は絶対に眠れないだろう。


 上下する株価を祈るように注視していると、時刻は午前0時30分を過ぎていた。もう1時間経ってたのか……。時間の流れが驚くほど速い。

 ダウ平均株価が大きく動いたのは、その時だった。


 チャート上でいきなり動意づいた株価は、その後もグングン上昇していく。前日比プラスに転じると、その後も100ドル高、200ドル高、ついには300ドル高も超えた。


「よし! キター!! っていうか、いったい何が起きたんだ!?」

 すぐさま投資情報サイトやSNSを検索する。マウスを操作する指が興奮でブルブルと震える。


 急騰の理由はすぐにわかった。そしてそれは、俺にとって最高のニュースだった。

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