第3話

「始まりの物語はいらんかね~。始まりの物語はいらんかね~」


 車が坂道に差し掛かると、突然に髑髏が喋り出した。

 私はすぐに両耳を塞いで伏せた。

 これで何回目だろう。


 お父さんとお母さんは怪訝に思うも、坂道が急だったせいで、どうせただ怖がっているだけだろうと考えたようだ。


 後ろの髑髏はおしゃべりだ。

 一度でも物語が始まると、なかなか話が終わらない。

 神様。どうか坂道を登り切るまでには物語が終わって下さい。


「この坂には~。この坂には~。死人が今も通行人に混じってる~~。そして、いつも目が合った人についていく~~。死人はこの坂での交通事故死の怨霊さ~~~」


 私は耳を塞いでいるのに、頭の中に直に髑髏の早口言葉が聞こえてくる。

 

「1960年~。1960年~。9月28日~~。午後5時頃~~。そこに一人の男の子がいました~~。男の子は~。自転車に乗っていると~~車に轢かれ~……」


「キャー――!!」


 私は気づくと、泣き叫んでいた。

 何事かと両親が怪訝な顔を向けている。

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