第23話 誓った朝

「う、ん……まぶしっ……!」


 今日もムスターヒ村は朝日に照らされ、新しい朝を告げる。それは、バーブノウンも例外ではなかった。

 部屋の窓から僅かに差し込む光の筋が、ちょうどバーブノウンの顔に当たる。気がついた瞬間、彼の瞼の中は白くなった。

 薄っすらと目を開けた瞬間、それは目に刺さった。あまりの眩しさに、バーブノウンはまた目を瞑りながら反対側へ寝転がった。そして再び目を開けると……。


「――――!?」


 そこには、すやすやと寝ているフィーダがいた。最初は驚いていたが、すぐに微笑んだ。

 そう、昨日の夜に晴れて恋人同士になった。酒で酔っていたとはいえ、その嬉しさは鮮明に記憶に残っている。


(可愛いなぁ)


 恋人という新たな関係になったせいか、フィーダを見るといつもよりも可愛らしいと思ってしまう。友達から恋人に変わっただけで、こんなにも見え方が変わるのだと関心していた。


「ん……」


 と、バーブノウンがそう思っていると、フィーダも目を覚ました。


「おはよう、フィーダ」


「うん……おあよう……」


 まだ完全に目が覚めていないようで、寝ぼけた声で朝の挨拶を返す。そんな様子も普段なら何も思わないはずが、今日はそれも愛おしいと感じるバーブノウン。自然と顔がニヤついてしまった。


「――――あ、あれ? 何でわたし……バーブと一緒のベットにいるの……?」


「あー、実はあの後フィーダがそのまま寝ちゃってさ。運んであげたんだけど……自分も珍しく酔ってたから、僕のベットに寝かせてしまったみたい……」


「ふ、ふーん。そうなんだぁ」


 嫌がってベットから飛び起きる……という仕草は一切見せることはなかった。

 すると、フィーダは体をモゾモゾと動かし、バーブノウンの胸に顔を埋めた。バーブノウンは彼女の良い匂いが鼻を刺激した。


「フィ、フィーダ?」


「ねえバーブ。昨日の夜のこと、忘れてないよね?」


「うん、もちろん覚えてるよ。逆にフィーダは酔った勢いで記憶がないかと思ってたよ」


「人生で初めてお酒を飲んだけど、酔うのは早いけど記憶は飛ばないみたい。だから覚えてるよ」


「そっか」


「それで……本当に良いんだよね……?」


「えっ……?」


「もしかして……覚えてない?」


「い、いや! もちろん覚えているよ」


 バーブノウンの言葉に、フィーダは埋めていた顔を出し、そして上目遣いでバーブノウンを見つめた。その表情に、バーブノウンの心臓は一気に鼓動が早くなった。


「あ、バーブの心臓すごいバクバクいってる」


「だ、だって……フィーダのその上目遣いが可愛すぎて……」


「――――」


 バーブノウンが正直に答えてしまったお陰で、フィーダも困った表情を浮かべながら恥ずかしそうに顔を赤くする。


「――――ねえフィーダ」


「なぁに?」


「その……昨日はお互いに酔っちゃってたから改めて伝えるけど――――僕はフィーダのこと好きだよ。あの時、本当にフィーダと出会えて良かった」


「――――うん。わたしもバーブのこと大好き。もう離さないし離れないから覚悟してね」


「うん、フィーダからは絶対に離れないから安心してね」


「うん」


 酔った勢いで言ってしまった冗談では全くない、酔っていない今この瞬間でお互いに想いを伝えあった。

 お互いが出会う前、お互いに苦難があった。だからこそ離れたくなかった。支えていきたいと思ったのだ。


「ねえバーブ」


「ん?」


「わたしね、もっと色んなことを知りたいって思った。ずっと銀竜シルバードラゴンの中で過ごしてきたし、人間を知ってからも脅威から逃げて来た。でも、バーブと出会って、この村のみんなとしばらく過ごして、もっと色んな世界を見てみたいって」


「――――」


「だからね……バーブ、わたしはバーブと一緒に色んなところに行ってみたい! バーブと一緒に!」


「――――っ!」


 ぎゅっとバーブノウンの手を握りながら、フィーダはそう言った。

 その握る強さに、バーブノウンははっとした。そして彼女の目を見ると、その目は嘘偽りない本気で覚悟を決めた顔だった。

 いつもはのんびりしている雰囲気を強く漂わせるフィーダだが、目の前にいる今の彼女は全く違った。その表情に、バーブノウンは少し驚いてしまったが、すぐにフィーダの気持ちを汲み取った。


「――――分かった! もっと色んな世界を見よう! 僕もまだまだ知らないことがたくさんあるから。そして……フィーダのことももっと知りたいから」


「――――! 最後のはちょっと反則……」


「ご、ごめんね……」


「でもね――――」


 フィーダに言われて、自分で恥ずかしくなったバーブノウンに、そっと手を握る。その手はとても小さくて、でもどこか心強くて安心する包み方だった。

 そして、フィーダはその手を見ながら言った。


「バーブだから許す」


「フィーダ……。フィーダの方が反則だよ」


「ふふっ、やったね」


 バーブノウンが人生で初めて出来た恋人、そしてこの世界で一番大切な人、フィーダ。彼女がちょっと意地悪い笑みを浮かべる様子も愛おしい。今にでも抱きしめてしまいそうになっていた。いや、彼はもうすでに彼女を抱きしめていた。

 自分のことを唯一理解してくれる、認めてくれる。そして、こうしていつも傍にいてくれるフィーダをこれからも大切にしていきたいと思った。

 それと同時に、彼の新たな目標が決まった瞬間でもあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勇者パーティの追放者と銀竜少女の旅 うまチャン @issu18

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ