電子端末データ《記録》【2040.05】-未公開-

2040.05

父の手記を発見した。

「きぼう」その言葉で詰られ、

「進歩」その言葉で殴られた心持ちだった。


私は考えなければ楽になれると、両親を見て思ったのだ。

両親の最後に、私はそれを学んだ。


だが、残っていた言葉。


「希望」「技術」「ハッピーエンド」。

私が世界から奪ったもの。


それを父は、望んでいたのか?

私は、父の残したもので、父の希望を刈ったのか?


今更、謝罪の言葉に意味はない。

すでに私は「誰か」に干渉したのだから。

私に出来るのは、間違っていた謝罪ではなく、

全ての責任を取り続ける高慢だ。


誰も考えないからこそ、誰も咎めないからこそ、

私は責任を取らなければいけない。


私は、責任をもって保護患者6名が不幸になる前に、

殺さなければならない。


ころさなければ、ならない。

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