最初は王道ファンタジーかと思って読み始めたのに、気づけば声を出して笑い、最後には妙な温かさまで胸に残っていました。この作品は「名前」という誰もが当たり前に持つものを、ここまで鮮やかな物語へ昇華した発想が本当に見事です。
特に、ある告白を境に二人の距離が一気に縮まる場面は、「もし肩書きではなく最初から本音で出会えていたら、この世界はもっと早く平和になっていたのでは」と想像が止まりませんでした。笑いは軽快なのに、その奥には先入観や思い込みを優しくほどく力がある一作でした。読後にはきっと、作品タイトルの意味を誰かと語りたくなるでしょう。
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本作は勝手にレッテルを貼られる事が、いかに抗い難く、理不尽な暴力なのかを描く物語です。
いえいえ。悲劇ではありません。
喜劇なのです。
人間は、先入観と固定観念に塗れた生き物です。
誰も、他人の本質なんて見てはいません。
偏見も満載です。
例えば多くのファンタジーな物語では。
勇者は雄々しい正しき英雄。
魔王は禍々しい悪しき梟雄。
そう決めつけています。
でもほんとうに、そうなのでしょうか?
本作に登場するのは二人の人物。
外見や名前によって周囲から自分の性質や役割を決めつけられた者たちです。
他人の偏見に人生を翻弄される者たちです。
そんな二人が出会ってしまったことから、物語は熱を帯びます。
もちろん、戦闘ではありません。
愚痴です。
愚痴がオーバーヒートするのです。
レッテル被害者が互いの事情を知った瞬間。
もう、そこに敵はいません。
〝わかる〟そう言ってしまうから。
ほんとうに辛さがわかってしまうから。
この出会いの結果は……本編をご覧になってください。
そうなのです。
共感こそが重要なのです。
勇者や聖戦なんてものではなくて、共感こそが世界を救うのです。
みんな分かりあいましょう。
いたわりあいましよう。
そういうお話が、本作なのです。
そして、けっきょく常識って疎かにすると痛い目に遭う。
他者の事をよく知らないのに、決めつけてはいけない。
そんな当たり前のことの大切さを、じわじわくる苦笑いのなかで学んでしまう良い作品なのです。
面白くてためになる。
だから読んで損はありません。
素直に、おすすめです。
【レビューコンテスト応募】
魔王討伐という王道の出だしから、まさかの「被害者の会」発足で幕を閉じるとは。読み終えてじんわりと笑顔になってしまいました。
この作品の核心は、名前という「自分では選べなかったもの」が人と人をつなぐ逆転の発想にあります。サタンという名の勇者と、エンジェルという名の魔王。どちらも親の勝手な思い込みで苦労させられ続けてきた。その苦労の重さが完全に一致した瞬間、何百年も続いた人間と魔族の溝が、剣一本交えることなく埋まってしまう。この構成の気持ちよさが見事でした。
二人の掛け合いのテンポも抜群で、魔王がヴェールを外す場面の緊張感と、直後の勇者の「いやいやいや」の脱力感の落差が絶妙です。シリアスな世界観を保ちながら笑わせる技術は、短編でこそ光るものだと思います。
「密やかに平和が齎されたことを世界はまだ知らない」という締めの一文も、この物語の温度にぴったりでした。
勇者と魔王が対峙する――。
そんな王道の幕開けなのに、読み始めてすぐ「これは普通の勇者譚じゃないぞ」と笑ってしまいました。
本作の魅力は、シリアスな世界観と絶妙なコメディの融合です。
魔王討伐という重々しい題材を扱いながらも、会話のテンポが非常に軽快で、気付けば最後まで一気に読んでいました。
特に好きだったのは、勇者と魔王の掛け合いです。
互いに相手を探りながら会話しているはずなのに、どこか噛み合わない。
それでいて妙に話が盛り上がっていく流れがとても面白く、何度も笑わせていただきました。
また、登場人物たちが抱えている“ある共通の悩み”も秀逸です。
本人たちは悪くないのに、どうにもならない事情に振り回される姿には思わず同情してしまいました。
笑えるのに、少しだけ共感してしまう。
そんな不思議な魅力があります。
短編としてのまとまりも良く、読み終えた後は思わず頬が緩みました。
クスッと笑えて、少し優しい気持ちになれる作品を読みたい方におすすめです!