第29話 紆余曲折あって、完成した姉の映画



 …この小説を書いていたことを、作者は忘れかけていたらしくて?おっそろしく更新に間が空いたが、まだ物語は始まったばかりなのだ。


 おれも、出演して、バイト代の日当2万円をせしめた、姉の主演映画・「サイキアトリック・フリーキー」が、完成して、試写会が挙行された。


 ”ザ・スター”、星華絵の最新作で、しかもカンヌ映画祭出品作品と言う、超話題作であって、会場は大変な熱気でムンムンしていた。

 「人いきれ」というのは、わかりにくい言葉だが、”人熱れ”とも書けて、”熱っている”、とかの転用もするらしい。こういう騒擾の只中、みたいな雰囲気はそれは全く未体験ではないが、たぶんこういう場に招待されているのはマスコミやら映画界の関係者で、名だたる錚々たる有名人士、斯界の重鎮が目白押しなのは容易に想像がつく…それゆえにか?その人いきれの感じが一種独特と、初体験のおれにも何となく感知しえた。


 「ハヤト! まあ! パリッとしてるわね! いい色のスーツ! ホントの俳優さんかと思っちゃった!」


 ポンと肩を叩かれて、振り向くと、例の、大輪の薔薇が綻んだような輝くような笑顔で、姉の華絵が、こちらは本当に宝石をちりばめたアンドロイドか何かが佇立しているような綺羅綺羅した風情で目を丸くしているのだった。


「よく来てくれたね! 姉さんもさっきから興奮しっぱなしで…人生最良の日って感じなのよ! いろんな方に紹介されたりして…」

 「そ、それはよかった…ですね? へへへ、へ。 今日のねえさんはいつもに増してすげーきれいだね。」

 「ありがとう! ハヤト」

 

 星華絵ねえさんは、小さなティアラを付けていて、「ローマの休日」の、ヘップバーンのスチール写真を、自然に連想させた…が、現実の大女優のナマの英姿?であって、迫力が違う。息が詰まるくらいの”美”と、”叡智”のニュアンスが全身から匂い立っていて、トラウマになるくらいに?おれは圧倒された。


 スリムな容姿、女神がかった美貌には、後光がさすどころか、全身に天然極彩色の特殊なエフェクトがかかっているような錯覚すらするのだった。


 … …


 映画は、想像をはるかに上回る出来というか、面白すぎるくらい面白くて、しかも深く考えさせられるという、超S級のエンターテインメントになっていた。


 

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国民的大女優の弟なのに超ブサイクなので不倫恋愛の成就までが前途多難前途遼遠である件 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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